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夏季休業前全校集会講話 (2018/7/24)

 西日本豪雨と言われる平成30年7月豪雨では、6月下旬から7月上旬に降った大雨で200人以上の方が亡くなった。また、最近の猛暑で6日間で100名近い人が熱中症で亡くなったという報道もあり、気象庁が災害と認識していると表明している。これから、この近辺で大雨が降り続いたり、30度以上の高温が続いたりする可能性もある。今の時点で予報は出ていないけれど、豪雨も災害的暑さも予報されていなかった。天気予報に注意し無理な外出は避けたり、体調の変化にも注意し休憩や水分補給などすること、大切です。呉々も、自分の安全には十分気をつけてほしい。特に、小樽は山坂が多くて、大雨には弱いと言われている。また、海が近いので、地震の時には津波の危険性もある。2011年3月の東日本大震災で、釜石市の小中学生のほとんどは犠牲にならなかった。それまで、防災教育を徹底して、①マニュアルに頼りすぎない、②どんな時でもベストを尽くす、③指示を待たずに率先して行動する、という訓練をしていたためと言われている。危なくなったら、自分の頭でよく考えて冷静に判断し、逃げることだ。

 また、被害に遭わないだけでなく、被害を与える場合も、自転車のようにある。数年前だが、自転車で老人に衝突して重度の後遺症を負わせ、8000万円以上の賠償を払うことになった例もある。保険に入るなど、対策は必要だ。

 さて、村上春樹という作家は、若いうちはどんなものでも吸収だと言っている。私もその通りだと思うが、一般的に言って成功した人の話しは自分に当てはまらないと、私はずっと思っている。例えば村上春樹は、そうやって僕はやってきて何の問題もなかったと言うけれど、多分才能が違う。村上春樹のやり方が私に合うとは限らない。人の成功体験は参考にならないと言うことだ。その上に、私は自分の過去の成功体験も参考にならないと思っている。年齢も違うし環境も違うだろう。同じやり方をしてうまく行くとは限らない。その都度その都度、最良の方法は何か考えて、何か新しいことを試してみることが大切だ。

 夏休み、講習や部活で忙しいとは言いながら、少しは何かを見て感じて考える時間があると思う。本でも映画でも、誰かとの会話でも、何かを得ることができると思う。充実して楽しい夏休みを過ごして、8月17日の金曜日、このように、いつものように、みんなの顔を見ることを楽しみにしています。

 良い夏休みを。
 

東京潮陵樽中会~積もる思い (2018/6/8)

 6月2日(土)に、東京青山で行われた旧制小樽中学校・新制小樽潮陵高等学校の東京同窓会、東京潮陵樽中会第62回総会・懇親会に参加してきました。当日は、22歳から86歳まで、幅広い年齢層の同窓生が40人以上も集いました。

 総会では、87期の亀石倫子さんによる「刑事弁護人になった私」と題した講演がありました。潮陵倶楽部会報86号(2017.8.26発行)にも寄稿されていましたが、GPS捜査の違法性などを争った裁判の弁護団リーダーなどで活躍されている方です。当日は、「美人過ぎる弁護士で有名」と紹介されていました。高校時代から弁護士を目指して勉強に勤しんだ方かと思っていたら、全く違ったので驚きました。また印象的だったのが、高校生に伝えたい激励の気持ち、人権を守る強い思い、そして意志の強さと行動力、集中力でした。今後の活躍が期待されます。

 懇談を通して、同窓の方々の母校に対する強い愛情を感じました。例えば、佐々島会長からは、昨年行った記念講演会のような現在の高校生に対する貢献を継続したいという強い思いを感じ、非常にありがたく思いました。多くの同窓生の方々が高校時代の思い出を大切にされていて、その思い出話に花が咲く様子でした。潮陵高と、自分たちが過ごした高校時代に対する、積もる思いを感じた会でした。
 

平成30年度進路資料巻頭言 (2018/5/1)

時々初心不可忘

校長 片 岡   晃

 武道を極めるには一万時間かかるという。一日2時間コンスタントに練習したとして、五千日、13年8ヶ月少々かかる計算だ。また、アメリカ合衆国国防総省関連の施設で、英語を母語とする人が日本語を習得するのに30時間×44週間=1,320時間とされている。このことから、日本人が英語を習得するには、毎日1時間英語の勉強をしても1,320日=3年7ヶ月少々かかる計算になる。ただし、国防総省関連施設で語学習得をするのは大学を優秀な成績で卒業した外交官の卵というエリートなので、この計算は高校生には当てはまらない可能性が高い。しかも、国防総省の訓練は毎日5時間の集中訓練だ。語学のように慣れが必要なものは集中的に訓練した方が効果的だから、高校生が毎日1時間勉強した場合、多分もっとかかる。ちなみに、日本語はアラビア語と同様のグループで、最も習得が難しいとされている。逆に言えば、日本人にとって英語は最も習得が難しい言語である可能性がある。

 武道を極めようと思っても13年8ヶ月は長いし、日本人の高校生が英語を習得しようと思っても最低でも3年7ヶ月は長い。努力を続けるためには、強い意欲がなければならない。意欲は、ある教育学者の説によると、目標を達成するために必要な労力と、目標の価値の釣り合いによる。少ない労力で高い価値を達成できるなら強い意欲を持てるが、大きな労力で低い価値しか達成できないなら、意欲は弱くなる。毎日の食生活改善・運動という労力と、ダイエットやシックス・パックの価値とを秤にかけて、多分多くの人はダイエットや肉体改造を果たせないのだろう。そうでなければ、ダイエット食品があれほど多く売られるわけがない。みんな、楽して痩せたくて、そううまくは行かないのだ。

 難関大学に合格するには、一日2時間は勉強しなければならないと言われている。この根拠は、実はない。お百度参りしたら願いが叶う、というよりは確実だと思うが、1年間で1000時間という説もある。また、どんなに時間がなくても、通学の合間や寝る前の少しの時間を見つけて勉強を重ねた生徒は目標を達成することを、我々教師は経験的に知っている。部活動で忙しいと言って、勉強を本格的に3年から始めた生徒は、失敗する危険性が高い。例えば、志望校受験に失敗したり、志望校に入学しても勉強について行くのに苦労したりするのである。肝心なのは、1年のうちから3年間コンスタントに勉強した生徒が、目標を達成する率が高いということだ。3年生の1年間の勉強時間が同じでも、1年生での勉強時間の違いで進路実現に差がつくである。

 「時々初心不可忘」は、能を集大成したと言われる世阿弥の著作、『花鏡』に出てくる言葉である。現在の日本語に書き下せば、「その時その時の初心を忘れてはいけない」となるだろう。世阿弥の頃の能は、例えば寺社でお祭りがあるときに催される一般大衆向けの芸能だったようで、能役者は一座を組んで方々を巡業して歩いていたらしい。小さな時は子役をやり、10代の声変わり前だったら若い女役をやる。声変わりをしたら若い男役の武者などをやり、三十代後半にもなれば老人役をやることもある。このように、成長につれて役が変わるので、その度に初心者を経験する。これが「時々初心」である。「初心」の頃から練習していけば必ず芸は上達する。「初心を忘れてはいけない」というのは、どのくらい上達したか確認することが大切だ、ということだ。よく、「初心に戻り」などという表現を目にすることがあるが、せっかく上達したのに初心者に戻っては、元も子もない。

 生徒の皆さんが勉強を続け、目標の価値をその都度確認し、意欲を強く持ち続け、1年たって進級・卒業する頃に、今の初心から大きく成長していることを期待している。
 

平成30年度進路ノート巻頭言 (2018/5/1)

人生百年時代を生きるための資質・能力の向上・開発を

校長 片 岡   晃

 リンダ・グラットンという英国の研究家が、日本で2007年に生まれた人の50%以上は107歳まで生きると予想している。この進路ノートを使う生徒も、半数以上が100年以上の人生を生きる可能性が高いと言えるのだろう。

 18歳まで過ごす高校生活の3年間は、それまでの人生の6分の1になる。平成29年度学校基本調査によれば高校進学率が98.8%となった現在、ほぼ全ての人が高校教育を受ける。しかし、大学教育を受けるのは同じ調査によれば54.6%である。それぞれの希望や能力に応じて、進路は変わる。この3年間は、100歳の人にとっての16年以上に匹敵する長さと重みがある。自分がどんな人生を生きたいと思っているのかを考え、何に向いているのか、今はできなくても将来身につけることが可能な資質・能力は何か、明確にすることが必要だ。悩んで友人や親や先生との対話を通して深めることは、大切なことだが、基礎的な知識を得ることは最初に必要なことだ。

 2020年から大学入試が変わる。実際にどう変わるか、まだ不明なことも多いが、入試が変わっても勉強すべきことに変わりがあるわけではない。また、人口減少社会となり、18歳人口が減少することから今の大学定員のままだと大学にもっと入りやすくなろうとも、資質・能力を向上させなければ就ける仕事が限定されることも変わらない。
数学者の新井紀子という人が、「東ロボくん」というAIの話しをTEDでしている。日本人なんだから日本語でと思いきや、理解してくれる人を増やすためだろう、日本語字幕はあるが英語で話している。新井氏の言いたいことは、「知識を詰め込むこと=暗記」はAIが人間よりもはるかに効率よくすることができるけれど、AIは文を理解できない。これからは、丸暗記から「意味の理解」へと教育が変換されなければならない、ということだった。

 野村総合研究所が2015年末に、現在の日本に存在している601種の職業がコンピューター技術で代替が可能か試算した。その結果、日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能になると予想している。創造性、協調性が必要な業務や、非定型な業務は、将来においても人が担うとして、映画監督や作曲家という職業はなくなる可能性は低いとしている。そう言えば、街灯がガス灯だった時代、ガス点灯夫という仕事があったようだ。勿論、電気による電灯が主流になって、その仕事はなくなった。

 100年以上の長い人生を生きる内に、仕事が変わることは十分に予測できる。ガス点灯夫も仕事を失った。しかし、その時期に破産した人などが多く出たという統計は見たことはない。多分、新しいけれど自分に合った仕事を見つけたと思う。どんな仕事がなくなっていくのかは、経済効率の問題もあるのでまだ分からないだろう。例えば、より多くの人数をより正確に処理でき、人件費より機械化の方が安価だとしたら、地上勤務のグラウンド・ホステスは航空会社からはなくなってしまうかもしれない。重いスーツケースを持ち上げてもらったりした時など、時々申し訳ないと思うこともあるし、実際、随分最近機械化されていると思う。しかし、もしグラウンド・ホステスの仕事がなくなっても、何かできる仕事はあるだろう。自分なりに資質・能力を向上させ開発していれば。

 生徒の皆さんが、この進路ノートを自分の進路・人生を考える際の基礎として十二分に活用し、人生百年時代を生きるための資質・能力を向上させ開発することを期待している。
 

平成30年度学校経営シラバス

平成30年度全日制課程学校経営シラバスはこちらです。

平成30年度定時制課程学校経営シラバスはこちらです。


 

平成30年度入学式式辞 (2018/4/9)


式   辞

 早く訪れた冬が過ぎ、本州では桜が見頃との便りが聞かれるようになりました。本日この良き日に、本校PTA会長 安藤修様、教育振興会会長 濱本進様ほか、多数のご来賓並びに保護者の皆様方のご臨席を賜り、入学式を皆様と共にかくも盛大に執り行えることは、私を始め本校教職員一同、この上ない喜びであります。誠にありがとうございます。

 この度入学を許可された二百四十名のみなさん、入学おめでとう。小樽潮陵高等学校へようこそ。難関を乗り越えて入学し、様々な夢と希望を持っていることと思います。まず何よりも、皆さんが充実して明るく楽しい高校生活を送ることを期待します。この式に臨む我々一同、心からみなさんの前途を祝します。

 さて、日本は人口が減少し続ける社会になりました。12年後の2030年には、総人口の6%以上が減ると共に、15歳~65歳の働き手が10%近く減るという推計を、国立の研究所が公表しています。2045年には、北海道の人口の四分の一が減り、ここ小樽市の人口は半分になるという推計もあります。また、世界的には大きな気候変動が予想されています。例えば、2050年には温暖化が進行し、京都の紅葉の見頃はクリスマス頃となるという予想を、国連の世界気象機関が公表しています。さらに、世界の政治に目を移すと、EUからの英国の離脱、アメリカ合衆国や中華人民共和国の政治的・経済的動向など、ここ数年の世界的な政治情勢の変動は大きなものがあります。その上に、平均寿命は延び続け、皆さんの多くが百歳まで生きる、人生百年時代がやって来たと言われています。

 このような大きな変動の時期だからこそ、これからの世界を生きる人たちには新しい能力が必要になるとされています。そのために、本日入学した高校生が大学を受験する2020年度から大学入試が変わるなどする予定なのです。しかし、今現在の高校生がやるべきことは、今までと変わりありません。大学入試で試されるのは、大学に入学してから勉強について行く基本的な力があるかどうかです。ですから、今学校で教わっている勉強を確実に吸収することが求められます。今の勉強がいつ役に立つか皆さんには分からないかもしれませんが、「すぐに身に付くものは、すぐに役に立たなくなる」と慶應義塾大学の塾長だった小泉信三という人は言いました。また、知識や技術は意外なところで役立つことは、iPhoneを作ったスティーブ・ジョブズという人が言っています。彼が大学を中退後に勉強した、カリグラフィーという文字を美しく見せる技法が、コンピュータのOSを作るときに役立ったというエピソードです。何かができるということは、決して無駄にはならないのです。

 ところで、学力などの知能検査などで測定できる能力に対して、我慢強さ、自制心、意欲などが社会的な成功に大きな関係があると、最近欧米でも主張されるようになってきました。同じ学力であれば、それらの非認知能力や社会情動スキルと呼ばれる力の差で、仕事や結婚、違法行為の有無に差が出るというのです。また、それらの力は、学校行事や部活動で育てられると主張する人もいます。さらに、掃除を丁寧に行うことや、姿勢を正すさえ効果的であるという主張もあります。実は、学校で行われる様々なことは、長い経験から何らかの良い教育的効果があるとされていることです。皆さんには、学校祭などの学校行事や部活動に積極的に関わり、友人との協働を通して、非認知能力、社会情動的スキルを伸ばしてほしいと思います。

 なお、高校時代は、肉体面で見ると成長期の最後です。精神面で見ると、子どもから大人になりかける移行期で不安定な時期です。幸せ物質と呼ばれるドーパミンを脳内に生成するためには、規則正しい生活で日光に適度に当たること、偏りのない食生活をすること、そして適度に運動することが効果的とされています。一言で言えば健康的な生活が、実りの多い高校時代につながります。また、文学や芸術に親しむことも大切です。たくさん本を読み、音楽や美術などに親しむことは、豊かな高校生活につながります。

 以上、今日から小樽潮陵生になる皆さんに対する大きな期待を述べました。もしかするとその期待は重荷かもしれませんが、是非、その大きな期待に応えてほしいと思います。ただ、成果を求めて焦っても何にもなりません。Haste not. Rest not.「急ぐな、休むな」。札幌農学校の二期生で国際連盟事務次長も務めた国際人、新渡戸稲造が好んで書にしたためた、ゲーテの詩の英訳です。毎日確実にやるべきことをやるのことが大切なのです。

 最後に、保護者の方々に申し上げます。高校生活の三年間は、子どもにとっては密度の濃い三年間です。高校卒業後の進路など、具体的に考え始める時期ですが、まだまだ独り立ちしていない時期です。この三年間、我々としてできる限りの指導・支援に努めますが、保護者の方々と我々学校との連携が非常に重要です。保護者と学校が共に子どもを育んでいきたいと思いますので、宜しくお願いします。

 本日入学した二百四十名が明るく楽しい学校生活を送り、様々な能力をこの三年間で獲得して伸ばすことを期待し、式辞といたします。

平成三十年四月九日
北海道小樽潮陵高等学校長 片 岡   晃