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平成30年度前期終業式講話(平成30年9月28日)

 胆振東部地震から3週間、未だに避難など苦しい思いをしている人たちがいることは本当に残念です。ただ、本校では特に大きな被害はなかったのは何よりと思います。前期、日頃の授業、放課後などの講習、さらに部活動や学校行事に、ここで上げきれない程の充実した取組がいくつもありました。個人的な活動の成果もあったと思います。前期の締めとして、少し話しをします。

 イギリスにエコノミストという経済誌があります。その研究部門が世界各国の民主主義度を報告する報告書、『2017年民主指標』を出しています。対象とした167国中、独裁国家は何カ国で世界人口の何分の一だと思うでしょうか。正解は、52カ国、世界人口の約3分の1とされています。日本周辺の中国、北朝鮮、ロシアも独裁国家です。そう言えば、韓国も台湾もかつては独裁国家でした。民主化されて旅行に行けるようになったのは、韓国が1990年、台湾が1996年でした。男女差別という点で、エコノミストは日本を欠陥がある民主主義国家に分類しています。世界経済フォーラムによるジェンダー・ギャップ指数では、日本は144カ国中114位で、男女差別が大きく残っているとされています。ヒラリー・クリントンはガラスの天井と言ったけれど、日本はコンクリートの天井だという新聞記事を見た記憶があります。

 どんなシステムも完全ではなく、民主主義も例外ではありません。改善する責任と権利はそのシステムの中で生きている人々にありますが、人は信じたいと思うものを信じる傾向があります。信じたくない情報を偽情報だ、間違っていると考えるのは、実は多くの人に見られることです。間違った判断をしないためには、正確な情報と冷静な思考が必要です。この点で、情報や考えをうのみにせず正しいかどうか点検する姿勢は大切です。ネット情報を簡単に信じている人はいませんか。ナチスドイツが権力を握ったのは、民主的な選挙を通してでした。非常に示唆的だと思います。

 さて、何事も経済効率で測る新自由主義という考え方は、現在日本の至る所に見られると思います。結果、成果が出なければ価値がないという考え方です。これは、別に新しい考えではないでしょう。直感的でわかりやすい考え方です。結果を出すことは良いことです。何よりも意欲向上につながります。ただ、それが全てではありません。勝つことは目標にはなりますが、目的ではないのです。焦りは禁物です。最近の報道を見ても、勝たなければ何の意味もない、結果が出なければ何の意味もないと焦って多くの問題が起きていること、分かるのではないでしょうか。

 最後に、行動と精神の関係について。池谷裕二(衣偏に谷)という脳科学の専門家が言うには、笑顔を作ると、快楽に関係したドーパミン系の神経系が変化し、楽しい気持ちになるそうです。楽しい気持ちだから笑顔になるのではないのですね。英語でも「あごを上げろ」というのは「困難な状況でも明るく元気でいろ」という意味です。脳科学的に正しいのかもしれません。また、背筋を伸ばすなど姿勢を良くしていると、自信を持てるようになる、さらには、睡眠不足は記憶力や集中力の低下を招くが、コーヒーの香りは睡眠不足の脳を復活させる薬物のような働きをする、とも言っています。詳しくは、『脳には妙なクセがある』という本を読んでみてください。

 また、池谷裕二先生は、『受験脳の作り方』という本で、脳科学に基づいた勉強の仕方についても書いています。例えば、記憶に良いのは、問題集を何度も解くことや人に話したり教えたりすることらしいです。さらに、間隔を少しずつ長くしながら復習するのが効果的とも言っています。どちらも図書館にあるので、興味ある人は読んでみたら良いでしょう。

 来週から後期に入ります。2学年はすぐに見学旅行があるし、3学年は受験の追い込み時期に入ります。1学年も安定した態度で学校生活を続け、来年以降の成果につなげてほしいと思います。やはり、成果、結果は、出せるに越したことはありません。小樽潮陵高校生、あごを上げて、明るく元気に過ごしましょう。
 

同窓会誌『潮陵』第88号寄稿(平成30年8月25日)

寝言は寝てから

北海道小樽潮陵高等学校 第36代校長 片 岡   晃

 同窓会誌への寄稿ということで、初めましてのご挨拶代わりに、今現在の私の教師としての問題意識等を含めて、次に綴りました。多少場違いに堅いところもありますが、ご一読いただければ幸いです。

 私は1959年、昭和34年の生まれです。英語教師として3校19年(室蘭栄高定時制、蘭越高、札幌真栄高)経験し、教頭として2校6年(興部高、千歳高)、校長として3校8年(知内高、札幌白陵高、恵庭北高)経験してきています。今春、第36代校長として赴任してきました。

 私が物心ついたのは、後志管内蘭越町でした。母方の祖父は大谷真宗派の僧侶で法誓寺という寺の住職を務めていました。1945年の敗戦後、焼け出されて食べるものもない子どもたちのために、祖母は愛星学園という養護施設を建てました。母は学園の事務を手伝い、父は小中学校教員でしたので、私が幼かった頃、園児のお兄ちゃんお姉ちゃんと一緒に暮らしていました。小学校に上がる頃に学園を離れて町営住宅に住み始めて、私に父と母がいたということを初めて知ったような記憶がありますが、これは後から作り上げた記憶かもしれません。中学校三年になる時に、父の転勤で小樽に引っ越してきました。本校のすぐ下、龍徳寺の上の真栄の借家に一家で住み、潮見台中学校に通いました。中学校三年の一年間だけでしたし、高校は結局札幌西高等学校に通ったので、同級生のこともあまりよく覚えていませんが、誰か私を覚えている同級生はいないのでしょうか…。ちなみに、大学は北海道大学に通いました。第二外国語として良くも考えずに中国語を選択しながら、結局就職を考えて英語英米文学科に移行し、ワーズワースとブレークの比較を卒業論文のテーマとしました。

 教員としての最良の思い出は、私は1999年4月から2000年3月までの約一年間、アメリカ合衆国ワシントンD.C.で英語教授法に関する研修を受ける機会を得たことです。今はもう運用されていない制度ですが、その当時はある一定の研修を受けた教員のうちから、北海道で毎年1名選抜されて派遣されていました。在籍したのは、第42代アメリカ合衆国大統領を務めたビル・クリントンの母校、ジョージタウン大学でした。良い機会と思い、妻と一緒に合衆国内数カ所を観光しましたが、当たり前ですが英語漬けの毎日で、特に後半の半年は大学院のゼミに参加し論文執筆に取り組みました。英語授業におけるコンピュータ活用に関するその論文は、合衆国の論文データベースであるERICにもED439600として登録されました。(余談ですが、20年ほど経っているのにまだ検索できることは、少々驚きです。)一年間の学費は、文部科学省と道教委からいただいた出張旅費から支出しましたが、200万円以上だった記憶があります。4年間でかかる経費は、寄付金を含めると1,000万円以上、と聞いた記憶もあります。この大学は広くて蔵書が多い図書館を持ち、有名な教授が何人もいました。大学進学率が日本よりは遙かに高く70%程度と言われる合衆国は、授業料が高額であり卒業まで到達できない中退者も多いことで有名ですが、ジョージタウン大学の中退率は低いかもしれません。時々、文献を探しに他の大学図書館に行った折など、ジョージタウン大学が多くの面で恵まれていることを感じていました。比較的安価に通学できる州立大学もありましたが、同じ大学といいながら教育の中身は全く別物だと実感したのを覚えています。

 さて、日本国憲法第14条は、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」としています。このことは教育基本法にも「教育の機会均等」という理念で反映されています。しかし、教育を受ける機会を保障するだけでは、「平等」な社会を形成するためには不十分ではないか、ここ数年の傾向はそれを示しているのではないか、と私は思うに至っています。いくつか、簡単に見てみたいと思います。

 『東京大学学内広報№1503(特別号)2016年(第66回)学生生活実態調査』(東京大学, 2017)が示したのは、東京大学に入学した学生は経済的に恵まれた家庭出身者が多いということでした。2000年から2016年までの学生の家計支持者の年収額は、950万円以上がほぼ一貫して過半数でした。半数を切ったのは、唯一2008年の49.9%だけでした。子どもが大学に入学する頃の保護者の年齢は50歳前後が多いと思われますが、その時点で年収950万円は十分に経済的成功を収めた人と言えるでしょう。また、家庭の所在地は東京都+関東が最多で2012年以降増加を続け、2016年調査では67.8%と過去最高を記録しました。

 『平成28年度北海道大学ファクトブック』(北海道大学, 2017)が示したのは、北海道大学に入学した学生のうち、北海道出身者が減少しているこということでした。北海道大学の学士課程に入学した学生の出身を見ると、北海道出身者が10年前の2008年の53.0%から毎年減少を続け、2016年には35.9%になりました。この後、2018年には32.2%にまで低下しています(『北海道大学概要2018-2019』, 北海道大学, 2018)。これと反比例するようなのが関東出身者で、2007年には12.1%だったのが、2018年には26.3%に達しています。なお、『平成29年度学校基本調査』(文部科学省, 2017)によれば、大学進学率の全国平均は54.8%ですが、北海道は47都道府県中40位の44.5%でした。

 『学校に対する保護者の意識調査』(ベネッセ教育総合研究所・朝日新聞社共同調査, 2018)は、同社による2004年、2008年、2013年、2018年の調査を比較しています。中でも注目されるのは、「所得の多い家庭の子どものほうが、よりよい教育を受けられる傾向があると言われます。こうした傾向について、あなたはどう思いますか。」という問いに対して、「当然だ」「やむを得ない」と肯定する保護者が増加し、「問題だ」と否定する保護者が減少していることです。実は、2008年までは差別を否定する人が過半数を占めていたのですが、2013年では逆転して差別を肯定する人が過半数を占めたのです。そして、この傾向は2018年では拡大しました。

 『全国児童養護施設調査2016』(NPO法人ブリッジフォースマイル, 2017)は、児童養護施設を退所した人々の進路を示しています。40都道府県134施設の職員から得られた回答を分析した結果、2015年度の施設退所者437人のうち、退所直後の進路は就職が67.5%、進学が26.5%でした。さらに、人数が少ないため一般論としては論じられないでしょうが、進学者のうち年度によって約15%~25%が中退しているとしています。それに対し、『平成29年度学校基本調査』(文部科学省, 2017)によれば、高等学校卒業生全体の進学状況は、現役大学・短大進学+現役専門学校進学者、つまり現役で高等教育機関に進学したのは71.0%です。過年度卒を含めると、高等教育機関進学者は80.6%とされています。なお、『学生の中途退学や休学等の状況について(報道発表)』(文部科学省, 2014)によれば、大学、短期大学、高等専門学校の学生のうち、中途退学者は2.65%でした。このことをまとめると、児童養護施設を退所した人は、大学・専門学校に行く割合が一般の半分以下で、また中途退学する率も一般の6倍以上、ということになると思います。

 『平成29年度全国学力・学習状況調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究』(国立大学法人お茶の水女子大学, 2018)は、文部科学省委託研究として平成29年度全国学力・学習状況調査の追加調査として実施した「保護者に対する調査」の結果を活用し、経済力などの家庭の社会経済的背景(SES: Socio-Economic Status) と学力の関係、学力に影響を与える学校・家庭・地域の取組等を多様な観点から統計的に分析しました。その結果、家庭の社会経済的背景(SES)より、児童生徒の「非認知スキル」が学力により大きな影響を与えるとしています。「非認知スキル」とは、 “non-cognitive skills” の訳で、「社会情動的スキル」(social and emotional skills)とも呼ばれるものです。一般に、「認知スキル」(cognitive skills)とは知能検査や学力検査で測定される能力で、点数という数値に置き換えられるものとされています。非認知スキルは、それ以外の広い能力を指します。例えば、 “Skills for Social Progress: The Power of and Emotional Skills” (OECD, 2015) は3つのカテゴリー毎にスキルを3つずつ例示しています。目標の達成カテゴリーのスキルは、忍耐、自制、目標への情熱。他者との協働カテゴリーのスキルは、社会性、尊敬、思いやり。情動の制御カテゴリーのスキルは、自尊心、楽観性、自信、です。ここで注目されるのは、「保護者の適切な働きかけは,SESの高低にかかわらず,子供の「非認知スキル」を高める傾向があり,小学生でより強い影響がある。」とされていることです。また、不利な環境を克服している児童生徒の保護者は、規則的な生活習慣を整えたり、読書を勧めるなど文字に親しむように促したり、また知的な好奇心を高めるような働きかけを行っている点が特徴とされています。

 東大入学者の保護者の年収や児童養護施設退所者の進路状況から言えることは、経済的に豊かな家庭の子弟は高い学力・学歴を有する傾向があり、経済的に豊かでない場合には学力は低下し学業を継続するのも困難な傾向があるという、たまたま出生した家庭の経済力による不平等です。ベネッセ教育総合研究所・朝日新聞社共同調査は、このことを過半数が受容する社会になった可能性を示しています。また、北海道大学入学者に占める北海道出身者の減少と特に関東出身者の増加は、私たち北海道の高校教師の努力不足という側面も指摘できるでしょうが、私は居住する地域による不平等と考えています。さらに、お茶の水女子大学の調査は、経済的に不利な環境を克服するにも、生活習慣に対する働きかけや読書を勧める取組など、ある程度の時間的余裕と教育的理念が必要であることを示しています。両親ともに不規則な就労形態である場合など、例えば夜早く寝させるだとか朝間に合うように起こすことは難しいことが想定できます。しかし、もし大きな価値を生活習慣に置く家庭であれば、多大な苦労をしながらもその困難を克服できるかもしれません。これは保護者の経済力による不平等と考えられるとともに、保護者の教育観による不平等とも考えられるのです。

 不平等が公正な競争の結果であれば、ある程度はやむを得ない、甘受するしかないと、私は思います。しかし、どんな家庭に生まれたか、どの地域で育ったか、どのような育て方をされたかで大きな不平等が生まれるのであれば、それは公正でしょうか。「貧乏は遺伝する」と言ったのはビートたけしでしたが、教育行政はそれを放置していて良いのでしょうか。低所得家庭や少数民族等の社会的弱者を優遇する政策など、問題は多いかもしれませんが、「結果の平等」を約束して能力の伸張に対する意欲を維持することは必要かもしれないと、私は思います。私が幼い頃に一緒に暮らした愛星学園の園児は、遅くとも小学校の頃には中学校を卒業したら退所して働かなければならないことを理解していたはずです(その当時、退所年齢は15歳でした)。学習の意欲と進路希望が関係しているとしたら、彼らは小学校段階で学習意欲を持つ機会と能力を奪われたと言えます。年上の園児に缶詰の缶から作る手裏剣の作り方を教えてもらい、壁に投げて遊んでいて指導員に怒られたな、なんてことを思い出しながら、教育に関して「機会の平等」は寝言なのかなと思います。「寝言は寝てから」(©高橋純子朝日新聞編集委員)言えということかな。
 

夏季休業後全校集会講話 (2018/8/17)

 これから4ヶ月の長丁場に入るに当たり、少しお話しをします。

 八月というと、「八月や六日九日十五日」という詩が思い出されます。実際、今年の8月1日、カレンダーを見ながら、「また8月6日、9日、15日がやってくる」と思っていました。この詩の作者は諸説あるようですが、1945年に、広島と長崎に原子爆弾が投下された日、そして昭和天皇が玉音放送を通じてポツダム宣言の受け入れを国民に伝え、戦争が終わった日です。今年で73年が経ちます。これからも長く続いてほしいと強く思います。

 さて、朝永振一郎という物理学者を知っているでしょうか。1965年にノーベル物理学賞を受賞した人です。朝永氏は1938年、32歳からドイツに留学していて、日記が出版されています。その日記から同じ箇所を、新井紀子という数学者と福岡伸一という生物学者が引用しています。新井紀子氏は『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』という本で、福岡伸一氏は8月9日の朝日新聞で、でした。引用されているのは1938年8月8日にある記述です。
 「物理学の自然というのは自然をたわめた不自然な作りものだ。一度この作りものを通って、それからまた自然に戻るのが学問の本質そのものだろう。しかし、これでとらえられない面がものごとにはあるにちがいない。
 活動しゃしんで運動を見る方法がつまり学問の方法だろう。無限の連続を有限のコマにかたづけてしまう。しかし、絵かきはもっと他の方法で運動をあらわしている。
 吾々は物ごとを有限の概念にかたづけてでなければ物が考えられないくせがついてしまった。しかしこれは何といっても無理にかたづけたものであるから、本のそのものではない。」

 みんなが今一生懸命に勉強しているのは、この「たわめられた不自然な作りもの」ですが、これはできるだけ身につけることが必要です。たとえ不自然でも、自然を理解するために工夫された理論を知らなければ、自然を正確に理解することはできないでしょう。しかし、一旦知識knowledgeを得た後に必要なのは、知恵wisdomです。福岡氏は「人文知」という言葉で表現していますが、「感性」「直観」とも表現できるでしょう。今の勉強で終わりでないということ、覚えておいてほしいと思います。

 8月から12月にかけての長丁場。3年生は受験準備に全力を。1,2年生は、積み重ねの大切さを思い出して、1日1時間は学校以外で勉強すること。充実した4ヶ月になること、期待しています。

※集会では言及しなかったが、この記述は岩波文庫『量子力学と私』に収録されている「滞独日記」では割愛されている。みすず書房『朝永振一郎著作集 別巻2日記・書簡』「滞独日記」では読めるが、現在版元絶版状態。本校図書館には在庫してあった。
※また、私は7月28日の「うちにかえって、「奥の細道」をよみ終わって、困った感じになってくる。何をしていいのか判らない感じである。何かしなくてはいけない。やりきれない。…核反応の論文などよまねばいけない。これをよまねば自然の真相に達し得られないのである。…しかし、…そのようにしても自然の全面に達するとは思われない。自然はもっと直接に素ぼくな態度でいかなければ示さない面があるように思われる。」という記述と8月8日の記述に関連があると思っているが、余りに時間がかかるため、言及しなかった。


 

夏季休業前全校集会講話 (2018/7/24)

 西日本豪雨と言われる平成30年7月豪雨では、6月下旬から7月上旬に降った大雨で200人以上の方が亡くなった。また、最近の猛暑で6日間で100名近い人が熱中症で亡くなったという報道もあり、気象庁が災害と認識していると表明している。これから、この近辺で大雨が降り続いたり、30度以上の高温が続いたりする可能性もある。今の時点で予報は出ていないけれど、豪雨も災害的暑さも予報されていなかった。天気予報に注意し無理な外出は避けたり、体調の変化にも注意し休憩や水分補給などすること、大切です。呉々も、自分の安全には十分気をつけてほしい。特に、小樽は山坂が多くて、大雨には弱いと言われている。また、海が近いので、地震の時には津波の危険性もある。2011年3月の東日本大震災で、釜石市の小中学生のほとんどは犠牲にならなかった。それまで、防災教育を徹底して、①マニュアルに頼りすぎない、②どんな時でもベストを尽くす、③指示を待たずに率先して行動する、という訓練をしていたためと言われている。危なくなったら、自分の頭でよく考えて冷静に判断し、逃げることだ。

 また、被害に遭わないだけでなく、被害を与える場合も、自転車のようにある。数年前だが、自転車で老人に衝突して重度の後遺症を負わせ、8000万円以上の賠償を払うことになった例もある。保険に入るなど、対策は必要だ。

 さて、村上春樹という作家は、若いうちはどんなものでも吸収だと言っている。私もその通りだと思うが、一般的に言って成功した人の話しは自分に当てはまらないと、私はずっと思っている。例えば村上春樹は、そうやって僕はやってきて何の問題もなかったと言うけれど、多分才能が違う。村上春樹のやり方が私に合うとは限らない。人の成功体験は参考にならないと言うことだ。その上に、私は自分の過去の成功体験も参考にならないと思っている。年齢も違うし環境も違うだろう。同じやり方をしてうまく行くとは限らない。その都度その都度、最良の方法は何か考えて、何か新しいことを試してみることが大切だ。

 夏休み、講習や部活で忙しいとは言いながら、少しは何かを見て感じて考える時間があると思う。本でも映画でも、誰かとの会話でも、何かを得ることができると思う。充実して楽しい夏休みを過ごして、8月17日の金曜日、このように、いつものように、みんなの顔を見ることを楽しみにしています。

 良い夏休みを。


 

東京潮陵樽中会~積もる思い (2018/6/8)

 6月2日(土)に、東京青山で行われた旧制小樽中学校・新制小樽潮陵高等学校の東京同窓会、東京潮陵樽中会第62回総会・懇親会に参加してきました。当日は、22歳から86歳まで、幅広い年齢層の同窓生が40人以上も集いました。

 総会では、87期の亀石倫子さんによる「刑事弁護人になった私」と題した講演がありました。潮陵倶楽部会報86号(2017.8.26発行)にも寄稿されていましたが、GPS捜査の違法性などを争った裁判の弁護団リーダーなどで活躍されている方です。当日は、「美人過ぎる弁護士で有名」と紹介されていました。高校時代から弁護士を目指して勉強に勤しんだ方かと思っていたら、全く違ったので驚きました。また印象的だったのが、高校生に伝えたい激励の気持ち、人権を守る強い思い、そして意志の強さと行動力、集中力でした。今後の活躍が期待されます。

 懇談を通して、同窓の方々の母校に対する強い愛情を感じました。例えば、佐々島会長からは、昨年行った記念講演会のような現在の高校生に対する貢献を継続したいという強い思いを感じ、非常にありがたく思いました。多くの同窓生の方々が高校時代の思い出を大切にされていて、その思い出話に花が咲く様子でした。潮陵高と、自分たちが過ごした高校時代に対する、積もる思いを感じた会でした。


 

平成30年度進路資料巻頭言 (2018/5/1)

時々初心不可忘

校長 片 岡   晃

 武道を極めるには一万時間かかるという。一日2時間コンスタントに練習したとして、五千日、13年8ヶ月少々かかる計算だ。また、アメリカ合衆国国防総省関連の施設で、英語を母語とする人が日本語を習得するのに30時間×44週間=1,320時間とされている。このことから、日本人が英語を習得するには、毎日1時間英語の勉強をしても1,320日=3年7ヶ月少々かかる計算になる。ただし、国防総省関連施設で語学習得をするのは大学を優秀な成績で卒業した外交官の卵というエリートなので、この計算は高校生には当てはまらない可能性が高い。しかも、国防総省の訓練は毎日5時間の集中訓練だ。語学のように慣れが必要なものは集中的に訓練した方が効果的だから、高校生が毎日1時間勉強した場合、多分もっとかかる。ちなみに、日本語はアラビア語と同様のグループで、最も習得が難しいとされている。逆に言えば、日本人にとって英語は最も習得が難しい言語である可能性がある。

 武道を極めようと思っても13年8ヶ月は長いし、日本人の高校生が英語を習得しようと思っても最低でも3年7ヶ月は長い。努力を続けるためには、強い意欲がなければならない。意欲は、ある教育学者の説によると、目標を達成するために必要な労力と、目標の価値の釣り合いによる。少ない労力で高い価値を達成できるなら強い意欲を持てるが、大きな労力で低い価値しか達成できないなら、意欲は弱くなる。毎日の食生活改善・運動という労力と、ダイエットやシックス・パックの価値とを秤にかけて、多分多くの人はダイエットや肉体改造を果たせないのだろう。そうでなければ、ダイエット食品があれほど多く売られるわけがない。みんな、楽して痩せたくて、そううまくは行かないのだ。

 難関大学に合格するには、一日2時間は勉強しなければならないと言われている。この根拠は、実はない。お百度参りしたら願いが叶う、というよりは確実だと思うが、1年間で1000時間という説もある。また、どんなに時間がなくても、通学の合間や寝る前の少しの時間を見つけて勉強を重ねた生徒は目標を達成することを、我々教師は経験的に知っている。部活動で忙しいと言って、勉強を本格的に3年から始めた生徒は、失敗する危険性が高い。例えば、志望校受験に失敗したり、志望校に入学しても勉強について行くのに苦労したりするのである。肝心なのは、1年のうちから3年間コンスタントに勉強した生徒が、目標を達成する率が高いということだ。3年生の1年間の勉強時間が同じでも、1年生での勉強時間の違いで進路実現に差がつくである。

 「時々初心不可忘」は、能を集大成したと言われる世阿弥の著作、『花鏡』に出てくる言葉である。現在の日本語に書き下せば、「その時その時の初心を忘れてはいけない」となるだろう。世阿弥の頃の能は、例えば寺社でお祭りがあるときに催される一般大衆向けの芸能だったようで、能役者は一座を組んで方々を巡業して歩いていたらしい。小さな時は子役をやり、10代の声変わり前だったら若い女役をやる。声変わりをしたら若い男役の武者などをやり、三十代後半にもなれば老人役をやることもある。このように、成長につれて役が変わるので、その度に初心者を経験する。これが「時々初心」である。「初心」の頃から練習していけば必ず芸は上達する。「初心を忘れてはいけない」というのは、どのくらい上達したか確認することが大切だ、ということだ。よく、「初心に戻り」などという表現を目にすることがあるが、せっかく上達したのに初心者に戻っては、元も子もない。

 生徒の皆さんが勉強を続け、目標の価値をその都度確認し、意欲を強く持ち続け、1年たって進級・卒業する頃に、今の初心から大きく成長していることを期待している。


 

平成30年度進路ノート巻頭言 (2018/5/1)

人生百年時代を生きるための資質・能力の向上・開発を

校長 片 岡   晃

 リンダ・グラットンという英国の研究家が、日本で2007年に生まれた人の50%以上は107歳まで生きると予想している。この進路ノートを使う生徒も、半数以上が100年以上の人生を生きる可能性が高いと言えるのだろう。

 18歳まで過ごす高校生活の3年間は、それまでの人生の6分の1になる。平成29年度学校基本調査によれば高校進学率が98.8%となった現在、ほぼ全ての人が高校教育を受ける。しかし、大学教育を受けるのは同じ調査によれば54.6%である。それぞれの希望や能力に応じて、進路は変わる。この3年間は、100歳の人にとっての16年以上に匹敵する長さと重みがある。自分がどんな人生を生きたいと思っているのかを考え、何に向いているのか、今はできなくても将来身につけることが可能な資質・能力は何か、明確にすることが必要だ。悩んで友人や親や先生との対話を通して深めることは、大切なことだが、基礎的な知識を得ることは最初に必要なことだ。

 2020年から大学入試が変わる。実際にどう変わるか、まだ不明なことも多いが、入試が変わっても勉強すべきことに変わりがあるわけではない。また、人口減少社会となり、18歳人口が減少することから今の大学定員のままだと大学にもっと入りやすくなろうとも、資質・能力を向上させなければ就ける仕事が限定されることも変わらない。
数学者の新井紀子という人が、「東ロボくん」というAIの話しをTEDでしている。日本人なんだから日本語でと思いきや、理解してくれる人を増やすためだろう、日本語字幕はあるが英語で話している。新井氏の言いたいことは、「知識を詰め込むこと=暗記」はAIが人間よりもはるかに効率よくすることができるけれど、AIは文を理解できない。これからは、丸暗記から「意味の理解」へと教育が変換されなければならない、ということだった。

 野村総合研究所が2015年末に、現在の日本に存在している601種の職業がコンピューター技術で代替が可能か試算した。その結果、日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能になると予想している。創造性、協調性が必要な業務や、非定型な業務は、将来においても人が担うとして、映画監督や作曲家という職業はなくなる可能性は低いとしている。そう言えば、街灯がガス灯だった時代、ガス点灯夫という仕事があったようだ。勿論、電気による電灯が主流になって、その仕事はなくなった。

 100年以上の長い人生を生きる内に、仕事が変わることは十分に予測できる。ガス点灯夫も仕事を失った。しかし、その時期に破産した人などが多く出たという統計は見たことはない。多分、新しいけれど自分に合った仕事を見つけたと思う。どんな仕事がなくなっていくのかは、経済効率の問題もあるのでまだ分からないだろう。例えば、より多くの人数をより正確に処理でき、人件費より機械化の方が安価だとしたら、地上勤務のグラウンド・ホステスは航空会社からはなくなってしまうかもしれない。重いスーツケースを持ち上げてもらったりした時など、時々申し訳ないと思うこともあるし、実際、随分最近機械化されていると思う。しかし、もしグラウンド・ホステスの仕事がなくなっても、何かできる仕事はあるだろう。自分なりに資質・能力を向上させ開発していれば。

 生徒の皆さんが、この進路ノートを自分の進路・人生を考える際の基礎として十二分に活用し、人生百年時代を生きるための資質・能力を向上させ開発することを期待している。


 

平成30年度学校経営シラバス

平成30年度全日制課程学校経営シラバスはこちらです。

平成30年度定時制課程学校経営シラバスはこちらです。


 

平成30年度入学式式辞 (2018/4/9)


式   辞

 早く訪れた冬が過ぎ、本州では桜が見頃との便りが聞かれるようになりました。本日この良き日に、本校PTA会長 安藤修様、教育振興会会長 濱本進様ほか、多数のご来賓並びに保護者の皆様方のご臨席を賜り、入学式を皆様と共にかくも盛大に執り行えることは、私を始め本校教職員一同、この上ない喜びであります。誠にありがとうございます。

 この度入学を許可された二百四十名のみなさん、入学おめでとう。小樽潮陵高等学校へようこそ。難関を乗り越えて入学し、様々な夢と希望を持っていることと思います。まず何よりも、皆さんが充実して明るく楽しい高校生活を送ることを期待します。この式に臨む我々一同、心からみなさんの前途を祝します。

 さて、日本は人口が減少し続ける社会になりました。12年後の2030年には、総人口の6%以上が減ると共に、15歳~65歳の働き手が10%近く減るという推計を、国立の研究所が公表しています。2045年には、北海道の人口の四分の一が減り、ここ小樽市の人口は半分になるという推計もあります。また、世界的には大きな気候変動が予想されています。例えば、2050年には温暖化が進行し、京都の紅葉の見頃はクリスマス頃となるという予想を、国連の世界気象機関が公表しています。さらに、世界の政治に目を移すと、EUからの英国の離脱、アメリカ合衆国や中華人民共和国の政治的・経済的動向など、ここ数年の世界的な政治情勢の変動は大きなものがあります。その上に、平均寿命は延び続け、皆さんの多くが百歳まで生きる、人生百年時代がやって来たと言われています。

 このような大きな変動の時期だからこそ、これからの世界を生きる人たちには新しい能力が必要になるとされています。そのために、本日入学した高校生が大学を受験する2020年度から大学入試が変わるなどする予定なのです。しかし、今現在の高校生がやるべきことは、今までと変わりありません。大学入試で試されるのは、大学に入学してから勉強について行く基本的な力があるかどうかです。ですから、今学校で教わっている勉強を確実に吸収することが求められます。今の勉強がいつ役に立つか皆さんには分からないかもしれませんが、「すぐに身に付くものは、すぐに役に立たなくなる」と慶應義塾大学の塾長だった小泉信三という人は言いました。また、知識や技術は意外なところで役立つことは、iPhoneを作ったスティーブ・ジョブズという人が言っています。彼が大学を中退後に勉強した、カリグラフィーという文字を美しく見せる技法が、コンピュータのOSを作るときに役立ったというエピソードです。何かができるということは、決して無駄にはならないのです。

 ところで、学力などの知能検査などで測定できる能力に対して、我慢強さ、自制心、意欲などが社会的な成功に大きな関係があると、最近欧米でも主張されるようになってきました。同じ学力であれば、それらの非認知能力や社会情動スキルと呼ばれる力の差で、仕事や結婚、違法行為の有無に差が出るというのです。また、それらの力は、学校行事や部活動で育てられると主張する人もいます。さらに、掃除を丁寧に行うことや、姿勢を正すさえ効果的であるという主張もあります。実は、学校で行われる様々なことは、長い経験から何らかの良い教育的効果があるとされていることです。皆さんには、学校祭などの学校行事や部活動に積極的に関わり、友人との協働を通して、非認知能力、社会情動的スキルを伸ばしてほしいと思います。

 なお、高校時代は、肉体面で見ると成長期の最後です。精神面で見ると、子どもから大人になりかける移行期で不安定な時期です。幸せ物質と呼ばれるドーパミンを脳内に生成するためには、規則正しい生活で日光に適度に当たること、偏りのない食生活をすること、そして適度に運動することが効果的とされています。一言で言えば健康的な生活が、実りの多い高校時代につながります。また、文学や芸術に親しむことも大切です。たくさん本を読み、音楽や美術などに親しむことは、豊かな高校生活につながります。

 以上、今日から小樽潮陵生になる皆さんに対する大きな期待を述べました。もしかするとその期待は重荷かもしれませんが、是非、その大きな期待に応えてほしいと思います。ただ、成果を求めて焦っても何にもなりません。Haste not. Rest not.「急ぐな、休むな」。札幌農学校の二期生で国際連盟事務次長も務めた国際人、新渡戸稲造が好んで書にしたためた、ゲーテの詩の英訳です。毎日確実にやるべきことをやるのことが大切なのです。

 最後に、保護者の方々に申し上げます。高校生活の三年間は、子どもにとっては密度の濃い三年間です。高校卒業後の進路など、具体的に考え始める時期ですが、まだまだ独り立ちしていない時期です。この三年間、我々としてできる限りの指導・支援に努めますが、保護者の方々と我々学校との連携が非常に重要です。保護者と学校が共に子どもを育んでいきたいと思いますので、宜しくお願いします。

 本日入学した二百四十名が明るく楽しい学校生活を送り、様々な能力をこの三年間で獲得して伸ばすことを期待し、式辞といたします。

平成三十年四月九日
北海道小樽潮陵高等学校長 片 岡   晃