北海道小樽潮陵高等学校  公式ホームページ
 

お知らせ

第69回高文連後志支部
高等学校演劇発表大会
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同窓会誌『潮陵』第89号寄稿(令和元年8月31日)
校長室より 平成最後の卒業式から令和最初の学校祭まで
校長 片 岡   晃
最初に これからの変化
 前号最後に少し触れたこれからの変化について、少し補足しておきます。
 まず、成人年齢が引き下げられたことについて、20歳成人年齢としている国・地域は日本、台湾を含め世界で4つのみです。実は、多くは18歳成人年齢なのです。
 さて、大学入学共通テスト等の変化については、学力観の変化があります。知識があるだけでは実社会では役に立たないとされ、持っている知識を活用する力が学力だと学力観が変化しました。そして、大学入試ではその活用できる学力を測るべきと変化したのです。その結果授業形態は、知識技能伝達型の教師主体の授業から、生徒の目的意識や課題意識に基づく生徒主体の授業へ変化するべきとされています。この変化は、欧米では早いところではカナダのように1980年代から見られるようになりました。私が1999年から2000年までアメリカ合衆国ワシントンD.C.で英語教授法の研修をしていたときも、教授陣は良く「授業の中心はあなた方です」「創造的な液体を体内に流しましょう」などと言っていました。高校の授業もいくつか見ましたが、生徒がノートを取るだけの授業はなかったという印象があります。本校でも、授業を見ていると時々、グループを作って相談させたり発表させたりしています。生徒を動かす授業が増えてきている印象があります。
 PISA2015結果によると、日本の15歳はフィンランド、上海、カナダと並んで世界でもトップクラスの学力を持っています。国際成人力調査(PIAAC)2013によると、日本の成人も世界でトップクラスの読解力、数的思考力、IT活用問題解決能力を持っています。普通に考えると、15歳から成人の間の高校生・大学生に対する教育は今までのとおりで良いような気はしますが、教育は未来への投資政策という一面もあるとされています。現状維持では未来に対応できない危険性があります。事実、前述した1980年代以降の欧米でも実証的研究に基づいて授業改革を行った訳ではなく、「このままじゃダメみたいだから」とか、「隣の国もやっているから」いう漠然とした理由だったという印象を、私は持っています。確かに、日本人の英語能力は、TOEICの国別平均スコアによると、韓国人、中国人より随分劣っているように見えます。韓国は20年以上前の1997年から小学校3年生で英語を教え始めているので、このままでは現状を打破できないから日本も同じように教えようというのも、理解できる発想です。また、今後AIがどうなるかは分からないにしても、人口減少社会になっていくことは多分確かです。身近なところでも、現在の小樽市内中学校三年生は前年度比で95人減少し、小樽桜陽高等学校が一間口減になります。新しい時代を生きる子どもたちには新しい教育を、というのも理解できることです。
 このような未来に対する仮説に基づく政策に対して、苅谷剛彦氏のように、教育政策の言説構築の思考習性を演繹的思考として、現実に立脚していない危険性を指摘する声もあります。子どもの教育に成功の方程式はありませんから、いつも子どもたちを注意深く見ながらより良い教育を手探りして変化させるしかないと私は思います。

【全日制】
平成最後の卒業生~第113期生234名~
 昨年、平成30(2018)年4月に赴任し、88号と89号に寄稿してきました。読み返してみると、平成31(2019)年3月の寄稿文で一年前の卒業生について書いており、時機を逸していると感じました。今号寄稿文では、まず平成31年3月に卒業した平成最後の卒業生、第113期生について記します。
 平成31年3月1日に行われた全日制第71回卒業証書授与式では、ここ数年の慣例に従って234名の卒業生全員に校長から卒業証書を手渡しました。卒業生は、男子は羽織袴や背広、女子晴れ着やドレスなど、各自が卒業式にふさわしいと思った服装で臨みました。何人かは私と壇上で写真を撮りましたが、余り多くはなく、式の進行を大きく妨げるほどではありませんでした。しかしやはり、一人一人に手渡すので2時間以上の時間がかかりました。多くの保護者の方々などいらしていただきましたが、長すぎると思われた方もいらっしゃるかと心配しています。
 進学面では、現役生は例年と変わらない成果を上げました。北海道大学には13名合格したほか、小樽商科大学17名、北海道教育大学19名と、一橋大学、東京工業大学を含め82名の生徒が国公立大学に現役合格しました。また、私立大学にも、慶應義塾大学や早稲田大学、明治大学といった難関校に現役合格しています。浪人していた卒業生も23名が国公立大学に合格しています。
 113期生の学習の特徴として、「課題研究」があげられます。「総合的な学習の時間」の一環として、生徒は各自で興味・関心のあるテーマを選び、文献などを調べて自分なりに考え、小論にまとめた上でスライドなどを使って発表しました。いわゆる、学会などでの発表をイメージすると近いと思います。テーマは多岐にわたっていますし、参考文献が1つだけのものから5つほど選んだものまであり様々ですが、多くの研究で生徒が懸命に考えたことが窺えます。課題を設定し、情報を収集し、整理してまとめる能力は現在の大学入試では問われがたい能力ですが、大学での学びではいずれ必要になる能力です。良い体験になったと思われます。

部活動~柔道部と剣道部の廃部、活躍状況
 生徒会規約によれば、年度当初に編成されなかった部活動、及び年度途中に部員がいなくなった部活動は休部となり、次年度始めにも編成されなければ廃部となります。柔道部と剣道部は昨年度部員がゼロになりました。今年度の新入部員に期待し何とかなれば良いなと思っていたのですが、残念ながら入部ゼロになってしまい、廃部となりました。明治36(1903)年に設立された、115年の伝統ある部活動だっただけに残念でなりませんが、生徒数減少の影響と時代でしょうか。他にも、本校ではまだ充分な部員のいる野球部ですが、全国・全道的には部員減少が問題になりつつあります。生徒が野球をやりたくなるように、丸刈りは止めている学校も多くなりつつある程なのです。
 他にも部員数が少ない部活動は、体育系では空手(2)、ボート(4)、文化系では演劇(6)、新聞(4)、漫画(5)、囲碁将棋(2)などです。これ以上の廃部が出ないことを祈ります。
 さて、部活動は全道大会が終わりました。今年度は9部活が進出しました。全道大会・全国大会出場を果たした部活動及び個人は、次の通りです。
◎全道大会出場(地区大会成績)
○弓道(男女団体優勝、男子個人3位、女子個人1~3位) ○テニス(女子W3位、女子S2位、3位2名) ○軟式テニス(男子W2位) ○卓球(女子団体優勝、男子W1位、男子S1・2位、女子S1・3位) ○バドミントン(女子団体優勝、男子S3位、女子W1・3位) ○陸上(学校対抗男女総合優勝、男子100m1位大会新、男子200m1位大会新、他18種目で1位) ○山岳部(最優秀賞)○放送局(総合賞、朗読部門優勝)
◎全国大会出場
【全国高等学校総合体育大会(インターハイ)】○陸上(2年女子:走り幅跳び) ○水泳(3年男子:100m自由形) 自転車(個人1年男子:4km速度) 【国民体育大会】○ボート 【全国高等学校総合文化祭】○文芸部 ○新聞部 【俳句甲子園】○文芸部

令和最初の学校祭:第72回潮陵祭「上げ潮」
 7月5日(金)~7日(日)の3日間にわたって、潮陵祭が行われました。
 初日は仮装パレード。山車を作って仮装し、吹奏楽の先導で学校からサンモールまでパレードです。いつからこの形態になったのかは分かりませんが、20年前の卒業アルバムを見ても町の中でパレードして何かをやっている様子が分かりますから、少なくとも恒例の行事になっているのでしょう。平日の午後にパレードして見てくれる人が大勢いること、サンモールという大きな商店街を占拠してパフォーマンスを演じられること、国道ではないにしてもそれなりに交通量のある道をパレードできること、どれも今となっては珍しいことかもしれません。土曜日午後から金曜日午後にパレードを移したら見てくれる人が激減して問題になったとか、大勢の人が集まる場所が近くにないとか、交通事故を心配して警察がパレードを許可してくれないとか、良くあることなのです。
今年のパレードにも、都合の付く保護者の方々が多く来ていただいたようでした。潮陵祭のパレードを見に来ていただいた方々の様子から、楽しみにされていることが良く分かります。本当にありがたいことだと思います。
 さて、学校祭の運営は生徒会が担います。本校の生徒会はお互いによく話し合い、カバーし合って運営に当たっていました。制帽・制服を廃止した頃のような自主性はないかもしれませんが、無茶なことも余りやりません。手順や方法を教えれば正確に業務を実行します。時にはお祭りで興奮する生徒もいますが、充分に冷静でルールを弁えています。よい子どもたちだと思います。最後の後夜祭を盛り上げるために私にお願いされたのも、景品を生徒会予算で買いに行って後夜祭でくじを引くことだけでした。かぶり物をして盛り上げてくれないかと言わない、充分に良い子どもたちです。

【定時制】
 平成31年3月1日に行われた定時制第71回卒業証書授与式では、4年生1名と、三修制による3年生4名が卒業証書を受け取りました。卒業した5名のうち3名は就職し、1名が専門学校に進み、1名は子育てに専念することになりました。この日は保護者の方々の他、本校定時制PTA会長榊原様他、同窓の方々と旧職員の方々13名に卒業を祝っていただきました。全日制の来賓者数よりもかなり多く、定時制の生徒を応援したいという強い気持ちをありがたく思いました。
 
令和元年度夏季休業後講話(令和元年8月19日)
校長室より 令和元年度夏季休業後講話

令和元年8月19日
校長 片 岡   晃

 2015年にアメリカ合衆国で公開された “Most likely to succeed” は、High Tech高校という学校を舞台にしたドキュメンタリー映画です。日本では一般公開されず、自主上映会などでしか見ることはできません。DVDが市販されておらず、アマゾンでも合衆国で作られたクレジット・カードがなければ視聴できません。プロジェクト型学習と言われる問題解決型学習を特色とするこの高校の授業では、 “sense of purpose” 「目的意識」が強調されています。やはりどんな方法でも、何かを学ぶためには、意識、気づき、悟り、覚醒が必要なのですね。ただし、その瞬間は何度もやって来る訳ではありません。例えば、生物は生まれた瞬間から死に向かっている存在だけれども、死ぬということを意識することはそうありません。毎日意識していたら病気になります。死を意識する瞬間にもっと生きようと思うものだと思いますが、滅多にない貴重な瞬間だと思います。

今を見る視点と将来を見る視点
 目的意識を持つ貴重な瞬間に、今を見る視点と将来を見る視点、この2つの視点が大切です。
 今を見る視点で重視しなければならないのは、効率です。例えば勉強方法では、できるだけ短い時間で多くを記憶し、活用する練習をすることが大切です。一夜漬けで暗記して試験が終われば忘れているというのは、勉強した成果が残らないので効率の悪い勉強方法です。また、書いて覚える方法よりも、問題を解いて覚える方法が、かかる時間が短いので効率の良い勉強方法です。勉強して得た知識より効率の良い勉強方法の習得が大切です。今を見る時には、効率を重視することです。
 将来を見る視点で重視なければならないのは、効率ではありません。映画「インターン」で、ロバート・デ・ニーロが演じた70歳の男性をインターン採用する面接試験で、「10年後の自分を想像してみてください」という質問がありました。80歳になった自分を想像するというのは一種のジョークでしょうが、この質問はカウンセリングでもよく使われる質問です。どんなに漠然としていても、将来を明るく建設的に考える人は、与えられた仕事・責任に良く取り組むことが分かっているからです。みんな、10年後の自分を想像してみてください。大学を卒業して、どんな仕事に就いているだろうか。20代で結婚する人は少数になっているけれど、結婚しているだろうか。その時に想像するのは、就きたい仕事に就いていたり、結婚したい相手と結婚している自分でしょう。効率よく仕事や結婚相手を決めることはしないでしょう。将来を見る時には、効率を考えてはいけません。

歴史の視点と現在の視点
 さて、香港では香港政府に抗議するデモが続いています。主催者発表によると最大200万人が集結しました。武力行使による犠牲も懸念されるなど、危険な状態になっているようです。例えばこのことを考える時には、歴史の視点と現在の視点の二つの視点が必要です。
 香港は1997年まで、つまり22年前まではイギリス領でした。一国二制度と50年間の高度な自治体制を、中国政府は約束してイギリスから返還されたのです。今30歳くらいの人が子どもの頃、その人はイギリス人だったのです。途中から中国人と言われても、香港人はアグネスとかジャッキーのような英語名を正式に持っていますから、心の中ではまだイギリス人だと思っているかもしれません。これが歴史の視点から分かることです。
 一方で、中華人民共和国は最近まで経済成長を続けていますが、沿岸部と内陸部の貧富の格差は大きいままです。内陸部の人は沿岸部に出稼ぎに来ることはできても、永住することはできないと言われています。豊かな沿岸部に人が押し寄せるのが目に見えているからでしょう。中国にはまだまだ豊かとは言えない地方が残されているようです。豊かな香港を手に入れるのに、2047年まで28年も待てない事情もあるのでしょう。これが現在の視点から分かることです。
 なお、1989年には中国の民主化を求めて軍に制圧された天安門事件も起こりました。何百人、何万人犠牲になったのか分かりません。そう言えば、1989年にはベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツが統一されました。また、ルーマニア革命が起こり、チャウセスク大統領が公開処刑されました。1991年には、ソビエト連邦が崩壊しています。奇妙な偶然ですが、1989年にはwwwの原型が作成されたと言われています。社会主義大国が終わるのとネット社会が始まるのとほぼ同時でした。中国本土ではGoogleもFacebookも使えないようにネットをコントロールしているとの報道もありますが、香港ではコントロールできないはずです。30年前と今の違いは、ネットにより動画などで世界中に目前で起こっていることを伝えることができることです。

 これから4ヶ月の間に、3年生は受検など進路本番を迎えます。1,2年生を含め、充実した学校生活を期待します。
 
令和元年度夏季休業前講話(令和元年7月24日)
校長室より 令和元年度夏季休業前講話
令和元年7月24日
校長 片 岡   晃
【全日制】
変化
 リクルート・キャリアの研究所が約千人の大学生・大学院生に対して、大学生・大学院生が就職する会社を決める決め手は何かを調べました。その結果、一番多かったのは、年収や大企業などの企業規模ではなく、自分が成長できるかどうかでした。年収や企業規模より自分の価値観が優先するというのは、それまでと大きく異なる変化です。
 アメリカでも、1980年以降15年ほどの間に生まれたミレニアム世代(千年紀世代)に、似たような傾向があると、2016年のギャラップ・ミレニアル世代調査は報告しています。また、2018年のギャラップ世論調査では、民主党員で資本主義に肯定的なのは47%、社会主義に肯定的なのは57%でした。2010年以降ほぼ同数だったことを考え合わせると、金儲けが必ずしも良いとは限らない、格差に対する反発が大きくなった変化と言えます。ちなみに、共和党員の場合は、資本主義に肯定的なのは71%、社会主義に肯定的なのは16%と、大企業が多いとされている共和党員らしい結果になっています。
 これらのことの背景にあるのは、ILO2019年調査が報告した貧富の格差でしょう。調査によると、世界の豊かな約1割の人たちが、世界の約半分の富を保有しています。逆に、貧しい半分の人たちが保有するのは、6.4%に過ぎません。アフリカではこの差が拡大し、貧しい半分の人は3.5%の富しか保有していないのです。

自己責任
 さて、変化はまだ他にも多くあり、みんなが大人になる頃にはどのような世界になっているのかは良く分かりません。良く分からないながら、みんなに意識して欲しいのは自己責任ということです。みんなは小中学校時代先生や親の言うことを良く聞いて育ってきた、よい子が多いと思います。自分が頑張れば成果が出ることが多かったと思いますが、成果が出ないことも今後あると思います。努力不足が原因なら自己責任ですが、自分のせいでないのなら自己責任ではないということを常に意識して欲しいと思うのです。
 例えば、大卒の3年以内離職率は30%以上で、この12年間変わっていません。長期間変化のない傾向であれば、原因は2つのうちのどちらかです。大卒の30%程度は常に使い物にならない人間であるか、または、大卒を雇用する企業に雇用を継続する上で何らかの問題があるか、です。もしも、勤務時間や給与、業務内容に問題があって離職するのなら、それは自己責任ではありません。悩むことも自分を責めることもしなくていいこともあると思います。
 なお、何かが自己責任と言うのは、自己に限定されると私は思います。当事者、自分自身だけがそれは私の責任という権利があるのです。例えば、女性自身が「女性であることを言い訳にしてはいけない」というのは問題ないかもしれませんが、雇用主などがそう言ったら何らかのハラスメントととして問題になるかもしれません。

充実した夏休みを
 さぁ、夏休み。1,2年生は部活や講習で忙しい人もいるだろうし、3年生は毎年受験体制が本格的になる時。それぞれに充実した夏休みを期待しますが、夏休みというといつも自分の高校2年の夏休みを思い出します。夏季講習に行く途中、普段はバスで通っていたけれど、夏休み中は自転車で通っていました。途中で、1年の時に同じクラスだった男と一緒になって話しながら学校に向かっていました。驚いたのは、その男は将来大学で教えたいから一生懸命に勉強している、と言ったことでした。とても大人しく成績優秀という印象もなかった友達が、そんなにはっきりした目的を持っていることを知って、私は非常に驚きました。そして、自分も何かやらなければとは思いました。ただ、思っただけで、実際にちゃんと勉強するようになったのはもっと後だったけれど、意識が新たになった瞬間でした。
 勉強だけでなく、行楽にも行くでしょうから、海の事故、山の事故など充分慎重に行動しほてしい。また、本を読んだり映画を観たり音楽を聞いたり、楽しんで欲しい。何に出会うかは分からないけれど、忙しい中でもなんとなく余裕があるのが夏休み。充実した夏休みを過ごして、8月19日月曜日、みんなの元気な顔を見ること、楽しみにしています。

【定時制】
変化   
 先日の参院議員選挙、選挙権を持っている人は投票に行っただろうか。参院選の投票率も48.8%と半数以下になりました。十代は31.3%の投票率でした。
 NHK放送文化研究所が公開した第10回「日本人の意識調査」では、45年前の1973年と比較して選挙が有効と思わない人が増えたという結果が出ました。民主主義の危機かもしれませんが、平和が続いているとも言えます。45年くらい前というと、1969年東大安田講堂占拠・東大入試中止、1970年三島由紀夫割腹自殺、1972年浅間山荘事件と、政治的に大きな事件が続いていた時期なのです。その後は、徐々に政治的には平和になり、国民の関心事は経済的なことに移っていくので、選挙が有効と思わなくなったのかもしれません。

自己責任
 さて、自分でやったことの責任を負うことを、自己責任と言います。
 私は基本的木に、自分に与えられている権利を行使しないこと、義務を果たさないことには自己責任が問われると思います。
 投票に行った・行かなかったことにも自己責任が問われるかもしれません。また例えば、会社員が禁止されているアルバイトをやったら、自己責任として罰を受けるでしょう。しかし、会社に隠せと指示されたのに従ったとしたら、その部分は自己責任を問われないでしょう。
 どこまでが自己責任で、どこからが自己責任でないかは場合によって変わります。しかし、自分の力ではどうしようもないことは自己責任ではありません。皆さんに期待するのは、自己責任であることと自己責任でないことを区別することです。時々、自己責任でないことに悩む人がいます。無駄とは言いませんが、それくらいなら自己責任であることに努力して欲しいと思います。何に対してでしょうか?もちろん、病気ややむを得ない事情でもない限り、学校に通うことと勉強すること、自分の心身ともに健康でいるように注意することですね。

充実した夏休みを
 さぁ、夏休み。海の事故、山の事故など充分慎重に行動することが必要ですが、仕事で忙しい人もいるでしょう。楽しんで欲しいと思います。本や映画や音楽、何に出会うかは分からないけれど、忙しい中でもなんとなく余裕があるのが夏休み。充実した夏休みを過ごして、8月19日月曜日、みんな元気に登校することを期待しています。
 
進路資料巻頭言(令和元年5月7日)
校長室より 進路資料巻頭言
自分が好きで得意なことを探究する
校長 片 岡   晃
学校を取り巻く状況
 北海道大学学士課程に入学した道内高等学校卒業生の割合が、2008年には53.0%だったのが2019年には31.8%と、10年強で20%以上減少した。2018年との差は0.4%だったので、これ以上は落ちない可能性がやっと見えてきた。道内生が減ったのと反比例するのが、関東・近畿出身者で、2018年に40%を超えた。また、大学進学率は全国が約55%であるのに対し、北海道は約45%である。学校を取り巻く状況として、記憶しておくべきことである。

予測しがたい未来
 野村総合研究所(2015)は、日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能になると予測した。その後OECD(2016)は、70%以上の作業が自動化されるのは9%の仕事だと予想した。随分パーセンテージが違うが、両者に共通しているところがある。それは、仕事のほぼ半分は次の10年や20年内にコンピュータかアルゴリズムに代用されるということと、高等教育を受けた働き手が担う仕事は自動化し難いが0%ではないということだ。例えば、レントゲンなどの検査結果を解析して診断するという臨床検査医師の仕事は、大量のデータを読み込ませた画像識別のAIが得意なことらしい。たとえ一台一億円したとしても、一人の医師に一千万の給料を10年払うのと同じと考えれば、検討に値する。逆に、教師のような仕事は自動化され易そうで自動化されないだろう。人間を相手にしていて対応が複雑でAIは不得意なことであり、費用対効果でマイナスと予想されるからだ。

自分が好きで得意なことを探究する
 機械学習のためのTensorFlowというソフトウェア・ライブラリがある。グーグルがオープンソースで公開していて、Pythonなどでソフトウェアを作成する際に使えるライブラリである。また、GNU Rというフリーソフトウェアを使えば、自宅でも統計分析を行うことができる。これらのソフトウェアを使える人材は少ないと言われており、企業間で争奪戦になっていると報道もある。
 現在は、画像識別を活用したソフトウェア開発により、車自動運転や疾病判断が普及する兆しがあり、機械学習やAIを活用したソフトウェア開発のニーズが高い。また、会員証や会員アプリをスキャンすることで顧客データを簡単に集められるようになり、人々の消費動向に関するデータが飛躍的に増加したため、統計分析のニーズが高い。しかし、いずれも10年も前から起こっている状況変化ではない。だから、4年後~6年後に求められる能力が分かるはずはない。何が役に立つのかは分からないから、自分が好きで得意なことを追求するのが一番良いと私は思う。運が良ければ、それで楽しく仕事ができるだろう。運が悪くても、2番目か3番目に好きで得意なことで仕事に就けるだろう。大切なことは、自分は何が好きなのか、何が得意なのかを体験的に理解することだ。

期待を込めて
 小樽潮陵高校に入学してきた生徒の多くは、恵まれた環境の下で頑張って報われた生徒だと思う。しかし、大学入試の一部に見られるような公正とは言い難い合否判定など、頑張っても報われるとは限らないこともある。そのような公正でないことは正されるべき問題だが、その他にも私が教師として問題だと思うことはある。例えば、就職に有利なように浪人を避ける傾向、出世を望まない傾向、同調傾向や格差意識の強さ、SNSなど現実感のなさ等である。小樽潮陵生に期待するのは、この進路関係資料を活用し、より良く進路について考え、進路希望を実現することである。
 
平成31年度学校経営シラバス
平成31年度学校経営シラバス 【全日制】 【定時制】
 
平成31年度始業式講話
校長室より 平成31年度始業式講話

 最後の、1ヶ月だけの平成年度の始まりに当たって、少しお話しをします。

 最初に、部活動について。
 結論的に言うと、部活動、頑張れる人は一生懸命頑張って欲しいということです。
 部活動が過熱して生徒が苦痛に思ったり、顧問の先生が過労で倒れたりする恐れがあるということで、部活動については北海道・北海道教育委員会から方針が出されています。本校も、学校としての方針を立てて、バランスのよい部活動の実現を図ることにしています。具体的には、休養日を平日1日、土日どちらか1日設定し、1週間で16時間以上は部活動をしないという方針です。シーズン中に集中して活動する部活動には無理な面もあるかと思うけれど、生徒の活動をできる限り保障する工夫もしてあります。あくまでも、バランスの良い部活動の実現が目的です。
 また、先生方の働き方に関連して、大企業についてはこの4月から働き方改革法が適用になっています。中小企業については来年の4月からです。多くの企業が月間45時間以上の残業をしないようになる中、先生方だけが部活動で休めないとしたら、ブラックになってしまいます。先生方の仕事は、実は年間通して忙しさが平均的な仕事ではなく、生徒がいたら忙しい、いなければそんなに忙しくないという仕事です。私の教師としての実感からしたら、農業や漁業のように、繁忙が繰り返す仕事に似ていると思います。ですから、大会前一時期忙しくても、他の時期に十分に休めたら良いので、バランスの良い働き方が必要ということです。
 高校時代に目標達成の経験や夢中になった経験を持った人は、高校生活に満足して卒業する確率が高いということは、私たち教師は経験的に知っています。そのような統計や研究もあります。部活動で目標達成や夢中になる経験ができるのなら、それはとても良いことです。部活動、頑張れる人は一生懸命頑張って欲しいと思います。

 次に、メタ認知を活用した学びについて。
 メタ認知というのは、自分の状況を客観的に認識することです。自分の適性と自分の性格、進路希望が一致しているか、客観的に見直すことも、メタ認知です。例えば、どんなに頭が良くても、人の話を聞くのが苦手、感情的にむらがある人が医者になったら、本人がとても苦痛を感じることがあるかもしれません。勉強ができるという理由だけで医者になってはいけないのですね。適性・性格に関するメタ認知が必要なのです。また、勉強方法を客観的に見直すことも大事です。例えば、書いて覚えている人、いませんか。時間がかかりすぎませんか。自分に合っていて効率の良い勉強法を考えるのも、大切なメタ認知です。

 最後に、社会で求められる能力の例について。
 日本経済団体連合会(経団連)の2018年度新卒採用に関するアンケート調査が、選考に当たって各社が特に重視した点を公表しました。回答した会社のうち、コミュニケーション能力を重視したのは80%以上、主体性は60%以上、チャレンジ精神、協調性、誠実性は40%以上でした。私が印象的だったのは、どれも学力に関係ないものばかり、社会情動的スキルまたは非認知能力だということです。ちなみに、語学力は6%、留学経験は0.5%でした。TOEICの国別平均スコアは日本(517点)は韓国(676点)、中国(600点)より随分低いのは有名な話しですが、就職で求められない、ニーズがないのであればできなくても当たり前でしょう。ただし、将来の人口減少を考えれば、日本国内でものを買う人が減るわけだから、どうしても海外に進出して行かなければなりません。そうなると、英語ができる人が就職しやすくなります。
 そう言えば、今から20年前、アメリカで一年間英語教授法研修をしていた時、ワシントンD.C.の銀行ATMにスペイン語のメニューがありました。今はどうか分からないけれど、西暦2000年当時は、多くのスペイン語を話す人が移民でいたからでした。家具か何かの店員さんに、スペイン語ができると就職に有利なのでスペイン語講座を取っていると言われた記憶もあります。
 現在は社会情動的スキル・非認知能力が評価されるメンバー型の会社も、社会的な変動に伴い、語学力などのIQ的学力が評価されるジョブ型の会社に変貌していくかもしれません。

 五月一日から新しい年号になります。充実した一年になることを期待します。
 
平成31年度入学式式辞【定時制】(2019/4/8)
校長室より 平成31年度入学式 式辞【定時制】

 早く訪れた冬が過ぎ、本州では桜が見頃との便りが聞かれるようになりました。本日この良き日に、本校PTA会長 榊原清久様ほか、多数のご来賓並びに保護者の皆様方のご臨席を賜り、入学式をかくも盛大に執り行えることは、私を始め本校教職員一同、この上ない喜びであります。誠にありがとうございます。

 まず、この度入学を許可された八名のみなさん、入学おめでとう。小樽潮陵高等学校へようこそ。入学に当たり、様々な夢と希望を持っていることと思います。この式に臨む我々一同、心からみなさんの前途を祝します。

 さて、現在十五歳で入学してきた人は、三修制を選択した場合、三年後の2022年3月に十八歳で卒業します。その翌月2022年4月から、成人年齢が十八歳になります。四年間で卒業する選択をした場合には、在学中に成人となります。早ければ三年後には成人となる皆さんの入学に際し、私が期待することを述べます。

 まず、皆さんには、三年後に悔いを残さず満足して卒業式を迎えられるよう、充実した高校生活を送ることを期待します。そのためには、目標を立てて達成する経験をすること、何かに夢中になることが必要です。勉強でも仕事やアルバイトでも学校行事でも何でも構いません。何かを達成すること自体、何かに夢中になること自体が重要なのです。達成、夢中という体験は、例えば忍耐、情熱、自信、などを育みます。人生百年と言われる長い人生で必要なのは、社会生活で生きる知恵です。今必要とされる知識・技能は、AI時代で必要とされない知識・技能になるかもしれません。例えば、英語が使えるという知識・技能は現在では一定程度価値がありますが、十年後は自動翻訳機の普及で余り価値がなくなっているかもしれません。しかし、外国語を習得する際に身に付けた勉強する習慣や計画性は、他の事柄に取り組むときに役に立ちます。達成、夢中という経験で得られた能力は、変わらずに必要とされるのです。IQテストの考案者の一人であったビネーは、知能を支える三大要素として、論理力、言語力に加えて熱意をあげています。何かを達成する熱意、何かに夢中になる熱意がなければ、高い知能は求められないと示唆しているように思えます。

 次に皆さんに期待するのは、言葉の力を身に付けることです。言葉はコミュニケーションのツールだという考えもあるようですが、それだけではないとしているのが、国際バカロレアです。国際バカロレアとは、認定された課程を持つ高校を卒業したら、欧米のどの大学にも入学できるというという国際的な教育システムです。国際バカロレアによれば、言葉は物事の本質を分析する時、推論を導く時、自身の意識を形づくる時などに使われるとしています。言葉は、自分独りで考えや感情に気付いたり深めたりする時にも使われます。言葉は、自分を深める重要なツールなのです。言葉の力を身に付けるために、ものを読み、考え、表現する経験を多く得ることが大切です。読んだ本の感想や要約を書くことや、自分の考えや感情を正確に表現することなど、心がけて欲しいと思います。

 最後に、保護者の方々に申し上げます。高校時代は子どもにとっては密度の濃い期間です。自分自身の進路など具体的に考え始める時期ですが、よく考えさせることが大切です。我々としてできる限りの指導・支援に努めますが、我々学校との連携を宜しくお願いします。

 本日入学した八名が言葉の力を身に付け、充実した学校生活を送ることを期待し、式辞といたします。

平成三十一年四月八日
北海道小樽潮陵高等学校長 片 岡   晃
 
平成31年度入学式式辞【全日制】(2019/4/8)
校長室より 平成31年度入学式 式辞【全日制】

 早く訪れた冬が過ぎ、本州では桜が見頃との便りが聞かれるようになりました。本日この良き日に、本校PTA会長 安藤修様、潮陵倶楽部会長杉江俊太郎様ほか、多数のご来賓並びに保護者の皆様方のご臨席を賜り、入学式をかくも盛大に執り行えることは、私を始め本校教職員一同、この上ない喜びであります。誠にありがとうございます。

 この度入学を許可された二百四十名のみなさん、入学おめでとう。小樽潮陵高等学校へようこそ。難関を乗り越えて入学し、様々な夢と希望を持っていることと思います。この式に臨む我々一同、心からみなさんの前途を祝します。

 さて、十五歳で入学してきた皆さんは、三年後の2022年3月に十八歳で卒業します。その翌月2022年4月から、成人年齢が十八歳になります。皆さんは、この三年間で法律的に大人になるということです。三年後には成人となる皆さんの入学に際し、私が期待することを述べます。

 まず、皆さんには、三年後に悔いを残さず満足して卒業式を迎えられるよう、充実した高校生活を送ることを期待します。そのためには、目標を立てて達成する経験をすること、何かに夢中になることが必要です。勉強でも部活動でも学校行事でも何でも構いません。何かを達成すること自体、何かに夢中になること自体が重要なのです。達成、夢中という体験は、例えば忍耐、情熱、自信、などを育みます。これらの能力は、社会情動的スキル、非認知能力と呼ばれることもあります。また、自己理解や意欲に関するメタ認知とも関係付けられ、勉強などで得た知識を知恵に変える重要な能力です。人生百年と言われる長い人生で必要なのは、社会生活で生きる知恵です。今必要とされる知識・技能は、AI時代で必要とされない知識・技能になるかもしれません。例えば、英語が使えるという知識・技能は現在は価値があるかもしれませんが、十年後は自動翻訳機の普及で価値がなくなっているかもしれません。しかし、外国語を習得する際に身に付けた勉強する習慣や計画性は、他の事柄に取り組むときに役に立ちます。達成、夢中という経験で得られた能力は、変わらずに必要とされるのです。IQテストの考案者の一人であったビネーは、知能を支える三大要素として、論理力、言語力に加えて熱意をあげています。何かを達成する熱意、何かに夢中になる熱意がなければ、高い知能は求められないと示唆しているように思えます。

 次に皆さんに期待することは、将来のリーダとなるための幅広い教養を備えることです。幅広い教養は、偏りのない賢明なものの見方・考え方を生み、多くの人の賛同を得ます。そのことを伝統的に理解しているのが、欧米のエリート教育です。社会のリーダを育成するために生徒に求められることの中に、欧米文化の源であるラテン語の学習が含まれます。ラテン語は現代ではもう使われなくなっており、知っていても実用的な利益はありません。しかし、例えばラテン語で書かれているミサ曲を理解し教養があるということが、欧米のリーダの一つの条件であると言われています。求められるのは実用的なスキルではなく、現代の文化に対する幅広い教養なのです。皆さんには、将来の日本・北海道を担うリーダとなるべく、古今東西の古典を学び、絵画を見、音楽を聴き、幅広い教養を備えることを期待します。

 次に皆さんに期待するのは、言葉の力を身に付けることです。言葉はコミュニケーションのツールだという考えもあるようですが、それだけではないとしているのが、国際バカロレアです。国際バカロレアとは、認定された課程を持つ高校を卒業したら、欧米のどの大学にも入学できるというという国際的な教育システムです。国際バカロレアによれば、言葉は物事の本質を分析する時、推論を導く時、自身の意識を形づくる時などに使われるとしています。言葉は、自分独りで考えや感情に気付いたり深めたりする時にも使われます。言葉は、自分を深める重要なツールなのです。言葉の力を身に付けるために、ものを読み、考え、表現する経験を多く得ることが大切です。日常的に読書に励んで豊かな語彙を獲得し、感想や要約を書くことなどは必要なことです。さらにグローバル人材として英語でも読んで考えて表現する経験を多く得て、事情が許せば海外の大学に進学することができる力を付けることを期待します。

 最後に、保護者の方々に申し上げます。高校生活の三年間は、子どもにとっては密度の濃い三年間です。高校卒業後の進路など、具体的に考え始める時期ですが、まだまだ独り立ちしていない時期です。この三年間、我々としてできる限りの指導・支援に努めますが、保護者の方々と我々学校との連携が非常に重要です。保護者と学校が共に子どもを育んでいきたいと思いますので、宜しくお願いします。

 本日入学した二百四十名が充実した学校生活を送り、幅広い教養と言葉の力を身に付けることを期待し、式辞といたします。
平成三十一年四月八日
北海道小樽潮陵高等学校長 片 岡   晃
 

卒業証書授与式式辞【全日制】(2019/3/1)

校長室より 第71回卒業証書授与式 式辞【全日制】

 二月下旬から温暖な日が続き、春の訪れが感じられる頃となりました。本日この良き日に、本校PTA会長安藤修様、潮陵倶楽部会長杉江俊太郎様ほか、多数のご来賓並びに保護者の皆様方のご臨席を賜り、卒業証書授与式をこのように盛大に執り行えることは、私を始め本校教職員一同、この上ない喜びであります。誠にありがとうございます。

 まず、先ほど卒業証書を受領した234名の第113期卒業生諸君、卒業おめでとう。平成最後の卒業生である皆さんは、今日から数多くの会員が各分野で活躍する潮陵倶楽部の一員となります。小樽潮陵高での三年間、勉学に励むことはもちろん、部活動で成果を上げた人、行事で頑張った人など、様々な体験をしたことと思います。充実して楽しい思い出の三年間だったことを願います。

 さて、自らの利益のみを優先し、多数を占める強い人々が少数の弱い人々をないがしろにするとしたら、民主主義は危機にあります。また、自らの都合の良いように歴史や出来事を解釈し、お互いの意見を聞かずに自らの意見を主張することに終始するとしたら、互いの戦いと殺戮につながることは、歴史が教えることです。そのような危険を指摘する声もある中、これからの社会を担う皆さんに期待したいことは、理想と良識を持つことです。理想という文言は本校校歌にもありますが、現実を超えたあるべき姿であり、民主主義という理念も理想の一つです。また、良識とは、大江健三郎やカート=ボネガット・ジュニアが英語でdecencyという言葉で表現した、思慮深い教養です。この理想と良識を持っている人は、例えば知識のない人たちにつけこんで損をさせたり、自らの権力で人を踏みにじるようなことはしません。弱い人も安心して生きられる社会を理想として、私たちは良識ある社会人を育成してきたはずです。これからの社会を作る、君たちは20年後には中心になっているでしょう。今の世の中が危ういとしても、将来を担う君たちが正してくれるかもしれません。実際、胆振東部地震に際し、SNSを活用して人を助けた中高生がたくさんいたことが、未来の希望です。理想の旗を掲げて、良識ある社会人として活躍することを期待しています。

 神谷恵美子という精神科医は外国語に堪能で、マルクス・アウレリウスの『自省録』やミシェル・フーコーの著作を翻訳するなどした偉大な知識人ですが、ハンセン病患者が隔離されている療養所で精神療法に携わったことで有名です。ハンセン病は別名ライ病とも言い、不治の病で恐ろしい伝染病とみなされていた時期があります。そのため、1996年まで患者は法律によって隔離されていました。後に隔離政策は憲法違反との判決が下され、国は多額の保証金を支払うことになりました。そのようなハンセン病患者の精神的内面に接した神谷さんは、生きがいについて考えた一冊の本を残しています。神谷さんによると、ハンセン病のために目も見えず皮膚の感覚もないという極限に近い状態でも、舌と唇で聖書を点字で読むなどして生きがいを持っていた人はいたということです。

 卒業す泉下にはいと返事して

 東日本大震災から、早いもので8年が経とうとしています。泉下とは、あの世にある地下の泉の下を意味しています。この句を詠んだのは、岩手県内の高校で国語の先生をしていた俳人、照井翠(てるい みどり)氏でした。この句には、多分近しい人を亡くした悲しみと、それを乗り越えて生きようとする気持ちが感じられます。きっとある種の生きがいをもって卒業するのだろうと思われます。

 重い病気や天災などの不幸に見舞われないことが一番ですが、どんな状況でも生きがいは持つことができるようです。神谷恵美子さんは、使命感を持っている人が最も強く生きがいを感じると記しました。また、ノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサの言葉として、「この世で一番不幸な事は社会から必要とされないこと」が伝えられています。皆さん、使命感を持って社会から必要とされる人となるためには、それに足る資質・能力が求められます。今後も益々自らの資質・能力を伸ばすよう、努力を継続してください。

 神谷恵美子さんが訳した『自省録』で、ローマ帝国皇帝だったマルクス・アウレリウスはこう記しています。「あたかも一万年も生きるかのように行動するな。不可避のものが君の上にかかっている。生きているうちに、許されている間に、善き人たれ。」人の命には限りがあります。今が永遠に続くわけではありません。しかし、皆さんは、これから人生で一番良い時期を迎えます。人生の春です。思う存分楽しんで欲しい、謳歌して欲しいと思います。これから10年くらいが、今後の人生の基礎になる発達の時期でしょう。存分に生きてください。

 終わりに、保護者の皆様、高等学校卒業を迎える本日まで、様々な喜びと苦しみを経てこられたかと思います。正に万感かと推察します。お子さん方はまだまだ幼く頼りなく思えるかもしれませんが、これから一歩一歩本当に大人になっていきます。この節目を迎えられたことを、共に心から喜びたいと思います。また、これまで我々教職員と様々な連携・協力をして頂きました。感謝申し上げます。誠にありがとうございました。

 本日の卒業を心から言祝ぎ、234名の第113期卒業生が一層成長し活躍することを期待し、卒業証書授与式の式辞と致します。
平成三十一年三月一日
北海道小樽潮陵高等学校長 片 岡   晃
 

卒業証書授与式式辞【定時制】(2019/3/1)

校長室より 第71回卒業証書授与式 式辞【定時制】

 二月下旬から温暖な日が続き、春の訪れが感じられる頃となりました。本日この良き日に、本校PTA会長榊原清久様、小樽市高等学校定時制通信制教育振興会会長阿部芳郎様、潮陵倶楽部会長杉江俊太郎様、財団法人小樽潮陵会理事新倉吉晴様ほか、多数のご来賓並びに保護者の皆様方のご臨席を賜り、卒業証書授与式をこのように盛大に執り行えることは、私を始め本校教職員一同、この上ない喜びであります。誠にありがとうございます。

 まず、先ほど卒業証書を受領した5名の卒業生諸君、卒業おめでとう。平成最後の卒業生である皆さんは、今日から数多くの会員が各分野で活躍する潮陵倶楽部の一員となります。小樽潮陵高での四年間三年間、様々な苦労があったことと思います。よく卒業まで頑張ったと思います。

 卒業生の皆さんは、これから多様な未来を開拓していきます。先の見えない現在とよく言われますが、未来はいつの時代でも予測不能なものでした。しかし、大きな変化が頻繁に起こるわけではありません。フランス革命もアメリカ独立革命も10年はかかっています。当たり前のことですが、今日は昨日の続きで、明日は今日の続きです。適切な食事や運動など心がけて心身の健康を維持すること、そして毎日の課題を確実に克服し続けることが大切です。その上で、GRITと呼ばれることもある、苦しい時ほど自分を信じて諦めない強い気持ちを培うことが望まれます。ロケットの父と言われるロバート・ゴダードが言ったように「昨日の夢は今日の希望になり、明日には現実になる。何が不可能かは分からない」のです。

 さて、神谷恵美子という精神科医は、ハンセン病患者が隔離されている療養所で精神療法に携わったことで有名です。ハンセン病は別名ライ病とも言い、不治の病で恐ろしい伝染病とみなされていた時期があります。そのため、1996年まで患者は法律によって隔離されていました。そのようなハンセン病患者の精神的内面に接した神谷さんは、生きがいについて考えた一冊の本を残しています。神谷さんによると、ハンセン病のために目も見えず皮膚の感覚もないという極限に近い状態でも、舌と唇で聖書を点字で読むなどして生きがいを持っていた人はいたということです。

 重い病気や天災などの不幸に見舞われないことが一番ですが、どんな状況でも生きがいは持つことができるようです。神谷恵美子さんは、使命感を持っている人が最も強く生きがいを感じると記しました。また、ノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサの言葉として、「この世で一番不幸な事は社会から必要とされないこと」が伝えられています。皆さんが使命感を持って誰かから必要とされ、生きがいをもって人生を送ることを期待します。

 終わりに、保護者の皆様、高等学校卒業を迎える本日まで、様々な喜びと苦しみを経てこられたかと思います。正に万感かと推察します。この節目を迎えられたことを、共に心から喜びたいと思います。また、これまで我々教職員と様々な連携・協力をして頂きました。感謝申し上げます。誠にありがとうございました。

 本日の卒業を心から言祝ぎ、5名の卒業生が一層成長し活躍することを期待し、卒業証書授与式の式辞と致します。
平成三十一年三月一日
北海道小樽潮陵高等学校長 片 岡   晃
 

東京同窓会誌「潮陵」第15号学校短信 (2019/2/6)

校長室より 東京同窓会誌「潮陵」第15号学校短信

 東京潮陵樽中会会報「潮陵」第15号の発行に際し、母校の近況についてお知らせします。
 9月6日7日は、胆振東部地震に伴う停電により臨時休校としましたが、校舎・生徒に大きな被害はありませんでした。全般的に、生徒は落ち着いた生活を続け、勉強に部活動に頑張っています。

【全日制】
 平成30年3月1日に112期、223名が卒業しました。
 進路実績としては、現役では北海道大学10名、小樽商科大学13名、北海道教育大学21名の他、一橋大学、東京外国語大学、新潟大学を含めて、国公立大学に82名の現役進学者を出し、例年並みの成果でした。北海道大学も現浪合わせて26名合格と、例年並みでした。私立大学については、明治大学、法政大学、早稲田大学などに75名が進学しました。なお、最も多く合格者が出たのは北海道科学大学、次いで北海学園大学でした。
 第71回潮陵祭は、“Novelty~殻を破るときは今~”をテーマとして、7月6日~8日の3日間にわたって行われました。サンモールでのパフォーマンスを多くの市民の方々に楽しんでいただいた仮装行列、食堂などのクラス企画やのど自慢、有志芸能の他、部活動の展示もあり、充実した学校祭でした。
 同窓会から支援いただいているニュージーランド語学研修に、今年度は3年生の吉田祐理子さんと2年生の鹿内ひかるさんが夏季休業中に行ってきました。夏季休業後の全校集会での研修報告では、二人の流ちょうな英語に多くの生徒が感嘆しました。研修の成果を遺憾なく発揮した研修報告でした。
 部活動も、例年と同等以上の活躍を見せています。体育系・文化系それぞれの実績は次の通りです。
体育系(大会毎)
・    高体連春季支部予選(11部全道出場):弓道部(男子団体優勝、男子個人1位、女子個人2位・3位)、柔道部(男子個人2位、3位)、テニス部(女子W2位、女子S2位・3位)、軟式テニス部(男子W2位)、卓球(男女団体優勝、男子S1位・2位、男子W1位、女子S1位・3位女子W1位)、バドミントン部(男子団体準優勝、男子S1位・3位)、バレー部(男子優勝、女子4位)、バスケット(男子優勝)、陸上(男女総合優勝、個人15種目優勝)、山岳部(男子団体1位)、空手部(男子団体形2位)
・    高体連秋季支部予選:弓道部(男女団体優勝、男子個人2位・5位、女子個人優勝・2位)、バスケット(男子優勝)
・    高体連秋季全道大会:バスケット(男子ベスト16)、弓道部(女子団体初全道優勝:全国大会出場)
・    高野連支部予選:春季大会(対双葉高:2回戦敗退)、選手権大会(対北照高:決勝戦敗退)、秋季大会(対北照高:決勝戦敗退)
文化系(部活毎)
・    新聞局:4人の部員で発行を続け、全道高校新聞コンクールで34年ぶりに最高賞
・    吹奏楽局:高文連支部音楽発表会奨励賞、小樽市民会館で第32回定期演奏会
・    音楽部:高文連支部音楽発表会最優秀賞・全道大会参加、小樽市民センターマリンホールで第67回定期演奏会
・    箏同好会:高文連支部音楽発表会最優秀賞・全道大会参加
・    1年個人:文芸コンクールで全国高等学校総合文化祭出場

【定時制】
 平成30年3月に、7名が卒業しました。その内、4年生は2名、三修制により卒業した3年生が5名、大学進学者は2名、就職者が4名でした。
 平成30年度当初在籍は、1年9名、2年5名、3年6名、4年1名、合計21名でした。
 1,2年生の宿泊研修は6月24日~25日に行われ、11名が参加し、定山渓ダムや円山動物園で研修しました。また、潮定祭は9月28日に行われ、クラス企画やカラオケで楽しみました。さらに、部活動については、久しぶりにバドミントン部が練習して地区大会に出場しました。
 定時制はここ数年入学者が10名未満となっており、存亡の危機にあります。三修制や少人数指導のメリット、普通科教育により幅広い職業に対応する基礎学力を備えられることなどアピールし、来年度以降も存続できるよう努めているところです。
 

冬季休業前・後全校集会講話原稿 (2018/12/21, 2019/1/18)

校長室より 冬季休業前・後全校集会講話原稿
平成30年12月21日
平成31年1月18日
※全日制は冬季休業前に全校集会で講話した。授業時数確保のため、冬季休業後は全校集会を行わなかったからでした。
定時制は冬季休業後に全校集会で講話した。冬季休業前はクリスマス会に参加した後、他用務のため全校集会で講話ができなかったからでした。

【全日制のみ】
○ 他の文化を知ること
 『82年生まれ、キム・ジヨン』という小説があります。韓国に1982年に生まれた女性の半生を描いた小説ですが、現代の韓国を知る上で非常に良いと思います。韓国は、人口が日本の3分の1,国土面積が4分の1で、自国内で十分な市場がないために他国に輸出することを念頭に製品を作ると言われています。K-POPがその良い例でしょう。小説では、男女差別がどんなにひどいかが描かれています。昔日本でも、男性と女性では食事のおかずが異なるということはあったようです。世界経済フォーラムが発表しているジェンダー・ギャップ指数によれば、日本は110位、韓国は115位で、男女差別という点では大差ありません。違うのは、韓国では女性政治家が日本より多いけれど、日本では収入と学歴が韓国よりは良いことです。日本も韓国も変えなければならないことはたくさんありますが、他の文化を知ることで客観的に自分たちを見ることは大切でしょう

○ トランプ記者会見
 トランプ大統領の2018年11月7日の記者会見で、日本の記者の発言が通じなかったと報道されていました。実際にYouTubeでその発言を聞いても、"How will you focus on ..."と言いたかったところが、"How will you hocus on ..."と発音されているように聞こえます。意味を理解するには推測が欠かせませんが、最初から推測するのは難しいものです。きっと、いつもなら、あの記者の人は問題なく発音できていたと思います。大統領の記者会見で質問するので、非常に緊張したのでしょう。いつもできることができないことがある。本番の怖さを、部活動等で知っている人も多いと思います。日常でできるのは、基礎的なことを体にたたき込むことと、できれば緊張する本番を何度も経験することです。

【共通】
○ 多文化共生
 上野千鶴子という有名な社会学者が、平成29年2月11日に中日新聞で、日本で移民は無理だから平等に貧しくなろう、とインタビューに答えていました。日本は単一民族神話が信じられてきた国で、日本人は多文化共生に耐えられないだろうから、移民など入れてもうまくいかない、というのがその根拠でした。実際、オーストラリアやカナダが多文化共生を目指して行っている共生教育は、非常に苦労しているようです。何よりも、その公開されている教材の豊富さが、その難しさを物語っていると思います。また、日本でも日本語指導を必要とする児童生徒が一番多いのは、文部科学省の調査に依れば愛知県です。ポルトガル語が母語は3200人、フィリピン語が母語は1600人で、多くは東南アジアから来ているようです。愛知県の教育がめざす人間像の一番目には、「共に生きる」があげられています。愛知県にとって、多文化共生が最も重要な課題であるようです。しかし、日本でも近い将来、海外から働きに来る人たちが増えそうです。難しいけれど大切なのは、慣れることと、相手の文化を知って理解すること、そしてお互いに意見や気持ちを交流することです。

○ 国民国家 nation state
 国民国家 nation state というのは、国民主権や権力分立などの制度が整備された近代的な国家形態です。この国家形態は、フランス革命、英国名誉革命、アメリカ独立革命を経て生まれました。1800年以降と考えれば、200年少ししか経っていません。この200年の間、国民国家を守ろうと様々な努力が重ねられましたが、もしかするともう持たないかもしれません。GAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)は国民国家を超えて利益を上げ、国民国家が依るべき税がうまく取れなくなってきています。デジタル税など新しい税制を、EUが考えるほどなのです。大きな変革に犠牲はつきものです。この状況を良く理解することが大切です。

【定時制のみ】
○ 読解力
 このような難しい話しを理解し考えるためにには、読解力が必要です。毎日の授業で読む教科書を、説明する、要約する、書き換える、などが大切なことです。毎日の授業に集中して行きましょう。
 

見学旅行集録巻頭言

時間軸の価値観

 毎朝笑いながら起きた。初めての放送の朝は、いきなりオールナイトニッポンのテーマが流れて少し驚いた。「これは真夜中の1時にかかる曲なのに、朝にかけるということは、オールナイトの朝ということか?」などと思ったが、担当が一生懸命考えたであろうコメントも気が利いていて面白かった。次の日からも秘かに楽しみしていて、その期待が裏切られることはなかった。放送局の起床放送、楽しかった。

 また、夜遅くの班長会議に出て班員への連絡を担ってくれた班長さんたちや、朝夕食で連絡事項と号令を担ってくれた司会の人たちなど、多くの生徒の協力のおかげで楽しくも充実した見学旅行になった。全員が時間も良く守った。在籍している生徒全員が参加して、全員が揃って帰ってくる見学旅行は、私の記憶にはない。良かった。

 さて、人は同じものを見ても同じように受け止めるとは限らない。金閣寺を見て、その歴史を思う人もいれば小説を思い出す人もいる。とりあえず写真を撮ってSNSにアップするのを何よりも優先する人もいる。価値観が違うので、受け止めが違うのは当たり前のことだ。特に、年齢や立場が違うと、その違いは大きくなる。「時間軸の価値観」が違うからだ、と言ったのは日本ハムファイターズの栗山監督だった。栗山監督は、全道の高等学校長が集まる研修会で講演して、こう言った。「選手、コーチっていう現場で頑張っている人たちはとにかく今勝つために必死になっている。フロントっていうのは10年後ぐらいまでイメージしている。監督の立場って3年ぐらいだろうか、時間軸の価値観が違う。だから意見が合わないのは当たり前だということが分かった。」価値観の違いと勝負事でもあることから、監督の判断は誰かにとっては間違っているのだろう、というのも非常に興味深かった。西川選手の二軍降格ねぇ…。

 今回の見学旅行、生徒はそれぞれ自分なりに工夫して目の前の見学旅行を楽んでいるようだった。楽しい思い出ができたのなら、良かったと思う。先生方は、多分、ともかく事故なく見学旅行を終えて帰った後、2年生後半からの進路指導を考えている。時間軸の価値観が違うので、時々、生徒と先生方で感じ方が異なる。USJでフライング・ダイナソーに乗ったことは、生徒にはきっとかけがいのない思い出だが、先生方には多分そうではない。それは当たり前のことだ。しかし、Steve Jobsが言うとおり、後になって分かることがある。“You can't connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future.”価値眼が違えば自分の判断は間違った判断だろうと自覚することは、健全なことだ。正解はない、納得解しかないから。

 久しぶりに京都を見学旅行で訪れて、いつものようにその美や歴史に感動した。多くの生徒もこの感動を味わったと思う。そしてまたいつものように、第二次世界大戦を想起して思いに耽った。一説には、京都はその歴史的価値が評価されて、原子爆弾も空襲も免れたと言われている。帰路機上で、引き換えに残された貴重な美と歴史なんだと思って写真を見ていると、珍しく飛行機は北側の夕張方面から新千歳空港に着陸した。大過なく帰れて良かった。
 

池谷裕二氏による良い勉強法25 (2018/11/20)

校長室より:池谷裕二氏による良い勉強法25

 前期終業式で話した、脳科学者の池谷裕二氏(東京大学薬学部教授)がある月刊誌で記憶について語っていました。勉強に励んでいる生徒にはためになることと思います。

 良い勉強法25

① 一つの情報をさまざまな方法で学ぶ
② 大きなタスクは細分化する
③ 新たな情報を学んだらその日のうちに復習する
④ 毎日さまざまな科目を少しずつ進める
⑤ 一気に詰め込まず、間隔を開けて繰り返す
⑥ クラスの前の方に座る
⑦ モティベーションを維持できる友達を作る
⑧ 集中力を妨げるものを排除し、マルチタスクをしない
⑨ 静かすぎる部屋も学習の効率を下げる(雨音、せせらぎ、そよ風の音が良い)
⑩ やる気ではなくシステムに従う(時間になったら粛々と勉強し始める)
⑪ できるだけ同じ時間に起きて、同じ時間に勉強して、同じ時間に寝る
⑫ 月毎、週毎など、ラフなスケジュールを作る
⑬ 良い姿勢、良い表情を心がける
⑭ 手書きでノートを取る
⑮ 不安な事項を書き出す(不安を可視化すると安心する)
⑯ 練習の意味で(反復)テストを取り入れる
⑰ 大切な情報を大きな声で読む
⑱ ずっと勉強しっぱなしはダメ(40分くらいで5~10分の休憩)
⑲ ときどき場所を変える(机、床の上、ベッドの上など)
⑳ 勉強が終わったらごほうびをあげる(散歩、音楽、ストレッチ、楽器演奏、シャワーなど)
㉑ 結果でなくプロセスを重視する
㉒ 水を飲む(1日少なくとも8杯)
㉓ 週に3回は運動する
㉔ 1日8時間くらい寝る
㉕ 語呂合わせなどの暗記法を活用する
 

平成30年度前期終業式講話 (2018/9/20)

 胆振東部地震から3週間、未だに避難など苦しい思いをしている人たちがいることは本当に残念です。ただ、本校では特に大きな被害はなかったのは何よりと思います。前期、日頃の授業、放課後などの講習、さらに部活動や学校行事に、ここで上げきれない程の充実した取組がいくつもありました。個人的な活動の成果もあったと思います。前期の締めとして、少し話しをします。

 イギリスにエコノミストという経済誌があります。その研究部門が世界各国の民主主義度を報告する報告書、『2017年民主指標』を出しています。対象とした167国中、独裁国家は何カ国で世界人口の何分の一だと思うでしょうか。正解は、52カ国、世界人口の約3分の1とされています。日本周辺の中国、北朝鮮、ロシアも独裁国家です。そう言えば、韓国も台湾もかつては独裁国家でした。民主化されて旅行に行けるようになったのは、韓国が1990年、台湾が1996年でした。男女差別という点で、エコノミストは日本を欠陥がある民主主義国家に分類しています。世界経済フォーラムによるジェンダー・ギャップ指数では、日本は144カ国中114位で、男女差別が大きく残っているとされています。ヒラリー・クリントンはガラスの天井と言ったけれど、日本はコンクリートの天井だという新聞記事を見た記憶があります。

 どんなシステムも完全ではなく、民主主義も例外ではありません。改善する責任と権利はそのシステムの中で生きている人々にありますが、人は信じたいと思うものを信じる傾向があります。信じたくない情報を偽情報だ、間違っていると考えるのは、実は多くの人に見られることです。間違った判断をしないためには、正確な情報と冷静な思考が必要です。この点で、情報や考えをうのみにせず正しいかどうか点検する姿勢は大切です。ネット情報を簡単に信じている人はいませんか。ナチスドイツが権力を握ったのは、民主的な選挙を通してでした。非常に示唆的だと思います。

 さて、何事も経済効率で測る新自由主義という考え方は、現在日本の至る所に見られると思います。結果、成果が出なければ価値がないという考え方です。これは、別に新しい考えではないでしょう。直感的でわかりやすい考え方です。結果を出すことは良いことです。何よりも意欲向上につながります。ただ、それが全てではありません。勝つことは目標にはなりますが、目的ではないのです。焦りは禁物です。最近の報道を見ても、勝たなければ何の意味もない、結果が出なければ何の意味もないと焦って多くの問題が起きていること、分かるのではないでしょうか。

 最後に、行動と精神の関係について。池谷裕二(衣編に谷)という脳科学の専門家が言うには、笑顔を作ると、快楽に関係したドーパミン系の神経系が変化し、楽しい気持ちになるそうです。楽しい気持ちだから笑顔になるのではないのですね。英語でも「あごを上げろ」というのは「困難な状況でも明るく元気でいろ」という意味です。脳科学的に正しいのかもしれません。また、背筋を伸ばすなど姿勢を良くしていると、自信を持てるようになる、さらには、睡眠不足は記憶力や集中力の低下を招くが、コーヒーの香りは睡眠不足の脳を復活させる薬物のような働きをする、とも言っています。詳しくは、『脳には妙なクセがある』という本を読んでみてください。

 また、池谷裕二先生は、『受験脳の作り方』という本で、脳科学に基づいた勉強の仕方についても書いています。例えば、記憶に良いのは、問題集を何度も解くことや人に話したり教えたりすることらしいです。さらに、間隔を少しずつ長くしながら復習するのが効果的とも言っています。どちらも図書館にあるので、興味ある人は読んでみたら良いでしょう。

 来週から後期に入ります。2学年はすぐに見学旅行があるし、3学年は受験の追い込み時期に入ります。1学年も安定した態度で学校生活を続け、来年以降の成果につなげてほしいと思います。やはり、成果、結果は、出せるに越したことはありません。小樽潮陵高校生、あごを上げて、明るく元気に過ごしましょう。
 

同窓会誌『潮陵』第88号寄稿 (2018/8/25)

寝言は寝てから

北海道小樽潮陵高等学校 第36代校長 片 岡   晃

 同窓会誌への寄稿ということで、初めましてのご挨拶代わりに、今現在の私の教師としての問題意識等を含めて、次に綴りました。多少場違いに堅いところもありますが、ご一読いただければ幸いです。

 私は1959年、昭和34年の生まれです。英語教師として3校19年(室蘭栄高定時制、蘭越高、札幌真栄高)経験し、教頭として2校6年(興部高、千歳高)、校長として3校8年(知内高、札幌白陵高、恵庭北高)経験してきています。今春、第36代校長として赴任してきました。

 私が物心ついたのは、後志管内蘭越町でした。母方の祖父は大谷真宗派の僧侶で法誓寺という寺の住職を務めていました。1945年の敗戦後、焼け出されて食べるものもない子どもたちのために、祖母は愛星学園という養護施設を建てました。母は学園の事務を手伝い、父は小中学校教員でしたので、私が幼かった頃、園児のお兄ちゃんお姉ちゃんと一緒に暮らしていました。小学校に上がる頃に学園を離れて町営住宅に住み始めて、私に父と母がいたということを初めて知ったような記憶がありますが、これは後から作り上げた記憶かもしれません。中学校三年になる時に、父の転勤で小樽に引っ越してきました。本校のすぐ下、龍徳寺の上の真栄の借家に一家で住み、潮見台中学校に通いました。中学校三年の一年間だけでしたし、高校は結局札幌西高等学校に通ったので、同級生のこともあまりよく覚えていませんが、誰か私を覚えている同級生はいないのでしょうか…。ちなみに、大学は北海道大学に通いました。第二外国語として良くも考えずに中国語を選択しながら、結局就職を考えて英語英米文学科に移行し、ワーズワースとブレークの比較を卒業論文のテーマとしました。

 教員としての最良の思い出は、私は1999年4月から2000年3月までの約一年間、アメリカ合衆国ワシントンD.C.で英語教授法に関する研修を受ける機会を得たことです。今はもう運用されていない制度ですが、その当時はある一定の研修を受けた教員のうちから、北海道で毎年1名選抜されて派遣されていました。在籍したのは、第42代アメリカ合衆国大統領を務めたビル・クリントンの母校、ジョージタウン大学でした。良い機会と思い、妻と一緒に合衆国内数カ所を観光しましたが、当たり前ですが英語漬けの毎日で、特に後半の半年は大学院のゼミに参加し論文執筆に取り組みました。英語授業におけるコンピュータ活用に関するその論文は、合衆国の論文データベースであるERICにもED439600として登録されました。(余談ですが、20年ほど経っているのにまだ検索できることは、少々驚きです。)一年間の学費は、文部科学省と道教委からいただいた出張旅費から支出しましたが、200万円以上だった記憶があります。4年間でかかる経費は、寄付金を含めると1,000万円以上、と聞いた記憶もあります。この大学は広くて蔵書が多い図書館を持ち、有名な教授が何人もいました。大学進学率が日本よりは遙かに高く70%程度と言われる合衆国は、授業料が高額であり卒業まで到達できない中退者も多いことで有名ですが、ジョージタウン大学の中退率は低いかもしれません。時々、文献を探しに他の大学図書館に行った折など、ジョージタウン大学が多くの面で恵まれていることを感じていました。比較的安価に通学できる州立大学もありましたが、同じ大学といいながら教育の中身は全く別物だと実感したのを覚えています。

 さて、日本国憲法第14条は、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」としています。このことは教育基本法にも「教育の機会均等」という理念で反映されています。しかし、教育を受ける機会を保障するだけでは、「平等」な社会を形成するためには不十分ではないか、ここ数年の傾向はそれを示しているのではないか、と私は思うに至っています。いくつか、簡単に見てみたいと思います。

 『東京大学学内広報№1503(特別号)2016年(第66回)学生生活実態調査』(東京大学, 2017)が示したのは、東京大学に入学した学生は経済的に恵まれた家庭出身者が多いということでした。2000年から2016年までの学生の家計支持者の年収額は、950万円以上がほぼ一貫して過半数でした。半数を切ったのは、唯一2008年の49.9%だけでした。子どもが大学に入学する頃の保護者の年齢は50歳前後が多いと思われますが、その時点で年収950万円は十分に経済的成功を収めた人と言えるでしょう。また、家庭の所在地は東京都+関東が最多で2012年以降増加を続け、2016年調査では67.8%と過去最高を記録しました。

 『平成28年度北海道大学ファクトブック』(北海道大学, 2017)が示したのは、北海道大学に入学した学生のうち、北海道出身者が減少しているこということでした。北海道大学の学士課程に入学した学生の出身を見ると、北海道出身者が10年前の2008年の53.0%から毎年減少を続け、2016年には35.9%になりました。この後、2018年には32.2%にまで低下しています(『北海道大学概要2018-2019』, 北海道大学, 2018)。これと反比例するようなのが関東出身者で、2007年には12.1%だったのが、2018年には26.3%に達しています。なお、『平成29年度学校基本調査』(文部科学省, 2017)によれば、大学進学率の全国平均は54.8%ですが、北海道は47都道府県中40位の44.5%でした。

 『学校に対する保護者の意識調査』(ベネッセ教育総合研究所・朝日新聞社共同調査, 2018)は、同社による2004年、2008年、2013年、2018年の調査を比較しています。中でも注目されるのは、「所得の多い家庭の子どものほうが、よりよい教育を受けられる傾向があると言われます。こうした傾向について、あなたはどう思いますか。」という問いに対して、「当然だ」「やむを得ない」と肯定する保護者が増加し、「問題だ」と否定する保護者が減少していることです。実は、2008年までは差別を否定する人が過半数を占めていたのですが、2013年では逆転して差別を肯定する人が過半数を占めたのです。そして、この傾向は2018年では拡大しました。

 『全国児童養護施設調査2016』(NPO法人ブリッジフォースマイル, 2017)は、児童養護施設を退所した人々の進路を示しています。40都道府県134施設の職員から得られた回答を分析した結果、2015年度の施設退所者437人のうち、退所直後の進路は就職が67.5%、進学が26.5%でした。さらに、人数が少ないため一般論としては論じられないでしょうが、進学者のうち年度によって約15%~25%が中退しているとしています。それに対し、『平成29年度学校基本調査』(文部科学省, 2017)によれば、高等学校卒業生全体の進学状況は、現役大学・短大進学+現役専門学校進学者、つまり現役で高等教育機関に進学したのは71.0%です。過年度卒を含めると、高等教育機関進学者は80.6%とされています。なお、『学生の中途退学や休学等の状況について(報道発表)』(文部科学省, 2014)によれば、大学、短期大学、高等専門学校の学生のうち、中途退学者は2.65%でした。このことをまとめると、児童養護施設を退所した人は、大学・専門学校に行く割合が一般の半分以下で、また中途退学する率も一般の6倍以上、ということになると思います。

 『平成29年度全国学力・学習状況調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究』(国立大学法人お茶の水女子大学, 2018)は、文部科学省委託研究として平成29年度全国学力・学習状況調査の追加調査として実施した「保護者に対する調査」の結果を活用し、経済力などの家庭の社会経済的背景(SES: Socio-Economic Status) と学力の関係、学力に影響を与える学校・家庭・地域の取組等を多様な観点から統計的に分析しました。その結果、家庭の社会経済的背景(SES)より、児童生徒の「非認知スキル」が学力により大きな影響を与えるとしています。「非認知スキル」とは、 “non-cognitive skills” の訳で、「社会情動的スキル」(social and emotional skills)とも呼ばれるものです。一般に、「認知スキル」(cognitive skills)とは知能検査や学力検査で測定される能力で、点数という数値に置き換えられるものとされています。非認知スキルは、それ以外の広い能力を指します。例えば、 “Skills for Social Progress: The Power of and Emotional Skills” (OECD, 2015) は3つのカテゴリー毎にスキルを3つずつ例示しています。目標の達成カテゴリーのスキルは、忍耐、自制、目標への情熱。他者との協働カテゴリーのスキルは、社会性、尊敬、思いやり。情動の制御カテゴリーのスキルは、自尊心、楽観性、自信、です。ここで注目されるのは、「保護者の適切な働きかけは,SESの高低にかかわらず,子供の「非認知スキル」を高める傾向があり,小学生でより強い影響がある。」とされていることです。また、不利な環境を克服している児童生徒の保護者は、規則的な生活習慣を整えたり、読書を勧めるなど文字に親しむように促したり、また知的な好奇心を高めるような働きかけを行っている点が特徴とされています。

 東大入学者の保護者の年収や児童養護施設退所者の進路状況から言えることは、経済的に豊かな家庭の子弟は高い学力・学歴を有する傾向があり、経済的に豊かでない場合には学力は低下し学業を継続するのも困難な傾向があるという、たまたま出生した家庭の経済力による不平等です。ベネッセ教育総合研究所・朝日新聞社共同調査は、このことを過半数が受容する社会になった可能性を示しています。また、北海道大学入学者に占める北海道出身者の減少と特に関東出身者の増加は、私たち北海道の高校教師の努力不足という側面も指摘できるでしょうが、私は居住する地域による不平等と考えています。さらに、お茶の水女子大学の調査は、経済的に不利な環境を克服するにも、生活習慣に対する働きかけや読書を勧める取組など、ある程度の時間的余裕と教育的理念が必要であることを示しています。両親ともに不規則な就労形態である場合など、例えば夜早く寝させるだとか朝間に合うように起こすことは難しいことが想定できます。しかし、もし大きな価値を生活習慣に置く家庭であれば、多大な苦労をしながらもその困難を克服できるかもしれません。これは保護者の経済力による不平等と考えられるとともに、保護者の教育観による不平等とも考えられるのです。

 不平等が公正な競争の結果であれば、ある程度はやむを得ない、甘受するしかないと、私は思います。しかし、どんな家庭に生まれたか、どの地域で育ったか、どのような育て方をされたかで大きな不平等が生まれるのであれば、それは公正でしょうか。「貧乏は遺伝する」と言ったのはビートたけしでしたが、教育行政はそれを放置していて良いのでしょうか。低所得家庭や少数民族等の社会的弱者を優遇する政策など、問題は多いかもしれませんが、「結果の平等」を約束して能力の伸張に対する意欲を維持することは必要かもしれないと、私は思います。私が幼い頃に一緒に暮らした愛星学園の園児は、遅くとも小学校の頃には中学校を卒業したら退所して働かなければならないことを理解していたはずです(その当時、退所年齢は15歳でした)。学習の意欲と進路希望が関係しているとしたら、彼らは小学校段階で学習意欲を持つ機会と能力を奪われたと言えます。年上の園児に缶詰の缶から作る手裏剣の作り方を教えてもらい、壁に投げて遊んでいて指導員に怒られたな、なんてことを思い出しながら、教育に関して「機会の平等」は寝言なのかなと思います。「寝言は寝てから」(©高橋純子朝日新聞編集委員)言えということかな。